最新記事
韓国

月額7万円の「韓国版・引きこもり対策」...壮大な社会実験が始まる

THE SOUTH KOREANS WHO WON’T LEAVE THEIR ROOMS

2023年6月2日(金)13時10分
ジョン・フェン(本誌記者)

コロナ禍で孤立が深刻化

一方、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は昨年、17.5%を記録。25年に20.6%、70年には46.4%に達すると予測される。15~64歳の生産年齢人口が減少するなか、社会保障の負担は膨らむ一方だ。

韓国政府によれば、引きこもりの若者は「一定期間以上、外部と切り離された狭い空間で生活している」。

彼らは学校でのいじめや学業のストレス、家庭内暴力、一般的なケアの不足などさまざまな要因によって「通常の生活を送ることが著しく困難」な状態にある。

ソウル市当局の1月の発表によれば、市内に住む19~39歳の4.5%に当たる12万9000人が、主に失業や社会的・心理的困難が原因で孤立した生活を送っている。

そのうち、引きこもりが5年以上続いている人が3分の1近く、10年以上引きこもっている人も11.5%いた。

同市が若者5513人を対象に行った調査では、半数以上が「引きこもりを解消したい」と答えており、同様の状況にある人は韓国全土で61万人に上ると推定される。

高齢者の社会的孤立については長年、研究がされてきたが、コロナ禍にステイホームや「社会的距離」が奨励された結果、孤立する人々は幅広い年代に拡大した。

韓国統計庁によれば、昨年に孤独を感じた人々は韓国全体の20%に上る。

「ここ30~40年の急速な産業化や家族の規模の変化、労働市場の見通しなども社会的孤立の理由かもしれない」と、米ブルッキングス研究所のシニアフェローで韓国部長を務めるアンドルー・ヨは指摘する。

「これまで政治家が働きかけをしてきたのは高齢者層だったが、総人口の上層部に人口が集中しているままでは経済政策が安定しない。現在の政府は、未来についてもっと考える必要があると理解している」と、ヨは言う。

「引きこもり」か「寝そべり」か

「韓国社会全体もそうだが、特に政府と保守政党が、若者にも支援が必要だと訴えていくことが一つの手だ。だが支援金は長期的な解決策にはならない。政府は若者を社会に取り込み、社会的にも気持ち的にも幸せに生きられる政策を整備すべきだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡

ワールド

米下院2補選、共和が勝利へ フロリダ州

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中