G7の間に中央アジアに地歩を築く中国
China Winning New Central Asia Foothold, Edging U.S. Out of Russian Bastion
沈はまた、中国による中央アジアへの進出が、欧米諸国の地位に悪影響をもたらすこともないだろうと言う。
「中国からすれば、中国と中央アジアの協力は、中央アジア諸国とロシア、アメリカやヨーロッパとの協力関係に影響を及ぼすものではない」と彼は指摘する。「私はかなり長い間、西側諸国の国際関係論を研究してきたが、ゼロサム・ゲーム理論は中央アジアの現状に合っていないことが分かった」と述べた。「中央アジア諸国はユーラシア大陸の重要な陸路として、中国、ロシア、アメリカおよびヨーロッパすべてと緊密な協力関係にある」
実際中央アジアは、重要なハブとして、中国が欧州域内で経済的な役割を拡大するのを可能にしてきた。ロシア経由で中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」もその例だが、現在はウクライナ侵攻による欧米の制裁のせいで欧州の幾つかの目的地に到達できなくなっている。
中央アジア諸国はロシアのウクライナ侵攻に支持は表明してはいないが、超大国同士の対立に巻き込まれたり、対立の誤った側について経済面でのチャンスを逃すこともしたくないと考えていると、沈は言う。
鉱物資源や輸送ルートの争奪戦
「グローバルサウス(途上国の大半が位置する南半球)の多くの国々と同様、中央アジア諸国も、どちらの側につくのか迫られることには反対だ」と彼は言う。「中国と中央アジア諸国の間には、中央アジアでカラー革命(民主化運動)を煽ろうとする外部勢力や、人権を口実とした内政干渉、国民の平穏な生活を壊そうとするいかなる勢力にも反対するという、強い合意がある」
しかしながら、地政学的な抗争が激しさを増し、レアアースをはじめとする重要資源の争奪戦が起きるなか、中国、ロシアとアメリカなどとの関係を維持しつつバランスを取ろうとする中央アジア諸国のやり方は、試練に直面することになるかもしれない。
ロシアのシンクタンク「ロシア外交問題評議会」の専門家で、トムスク大学孔子学院のディレクターを務めるアーテム・ダンコフは本誌に、「中国は中央アジアの鉱物資源がもっと必要だし、中央アジアは欧州に通じる道がもっと必要だ」と語った。「中央アジアは、新疆ウイグル自治区など中国西部にある中国企業にとって、重要なマーケットだということも忘れてはならない」
ダンコフはまた、「この地域における社会的・経済的な成長は不安定」であり、中央アジア諸国には「幾つかの深刻な社会的・政治的な問題」が根強く残っているとも指摘する。戦争や摩擦に収まる気配が見えない状況は、中央アジア諸国を弱い立場に追いやりかねない。「そう考えると、アメリカは今後、中央アジアにおいてロシアと中国に挑戦する余地がまだあるし、挑戦しなくてはならない」