「世界最大」となった中国海軍──インド洋で増す存在感...ジブチ「保障基地」が果たせる役割とは
CHINESE SUBS APPROACH
「世界最大」となった中国海軍はジブチ保障基地を拠点にインド洋へ潜水艦を展開するとみられている ROBERT NGーSOUTH CHINA MORNING POST/GETTY IMAGES
<インド洋で、深く静かに拡大する存在感、潜水艦や調査船の活動が波乱を招いている>
米国防総省が昨年11月に公開した報告書「中国の軍事・安全保障動向2022」によれば、今や中国海軍は「数値的」に世界最大だ。中国が「より遠方で軍事力を誇示し、維持する」能力を手にする上で、アフリカ東部ジブチにある中国海軍の「保障基地」が重要な役割を果たすと、同報告書は指摘している。
中国軍初の国外基地であるジブチ保障基地には、全長300メートルにわたる係留ドックが整備され、大型艦船の空母や潜水艦、揚陸艦が入港可能な状態だ。水上艦と潜水艦向けの乾ドックや修理施設も建造されるのではないかと、専門家はみている。2017年に正式に開設されて以来、この基地では新たな岸壁の建設が続き、地下には電子・サイバーセキュリティー施設が存在する疑いもある。
ジブチは紅海の玄関口に位置する要衝だ。その地に中国が構える基地は軍事演習やアウトリーチ活動に積極的に関与し、存在感を示している。
同基地は「ロジスティクス施設」または「支援基地」だと、中国は国際社会に説明している。だが最近の建設状況を見れば、完全な海軍基地と化しているのは明らかだ。
中国が経済・商業活動を通じてインド洋地域で存在感を強めようとするなか、インドにとってジブチ保障基地の整備(さらに、その結果として、インド沿岸近くで中国の潜水艦や調査船のプレゼンスが高まる事態)は、安全保障懸念の拡大を意味する。
インド洋では09年以来、中国海軍の存在感が着実に大きくなっている。インド洋北西部にあり、ジブチやソマリアが面するアデン湾では当時、身代金目的の海賊行為やシージャックが横行し、海上輸送を妨害していた。そのため、国際社会が乗り出した海賊対処活動に中国も参加した。
現在に至っても、中国海軍のプレゼンスを正当化する主な名目は商業活動や海上交易の安全確保だ。海賊対策が任務だと主張して、13年以降はインド洋に潜水艦を展開してきた。
水中ドローン部隊も駆使
中国潜水艦にとってインド洋への通り道はマラッカ海峡、ロンボク海峡、スンダ海峡のどれかだ。
スンダ海峡は平均水深50メートルで、かなり浅い。砂州や石油プラットフォームが点在し、漁業が活発なこともあって難路だ。ロンボク海峡には、潜水艦が通常航行モードで進むのに十分な深度がある。一方、マラッカ海峡では運航安全上、潜水艦は水上航行しなければならない。潜水艦は多くの場合、物資補給を行う潜水母艦を付随するため、見つかりやすい。
インド洋では17年以来、中国海軍の調査船と潜水艦の存在が「常態」になっている。インドメディアの報道によれば、この年、中国海軍最高峰の636A型海洋総合調査船「銭三強(海洋22号)」がインド洋で調査を実施。潜水艦活動の改善が目的だった可能性が高い。