最新記事
独裁者

プーチン唯一の盟友ルカシェンコが病気?戦勝記念行事の途中で帰国

Putin Ally's Parade Appearance Sparks Health Speculation

2023年5月10日(水)14時46分
ニック・モルドワネック

戦勝記念パレードを見るルカシェンコ(中央)(5月9日、モスクワ) Sputnik/Gavriil Grigorov/REUTERS

<対独戦勝記念イベントに列席した旧ソ連諸国のなかでも唯一、ウクライナ戦争を支持してきたベラルーシのルカシェンコがで途中で帰国。「健康上の理由」からだという。ルカシェンコにとってもプーチンにとっても一大事だ>

ベラルーシを26年にわたって統治し、「欧州最後の独裁者」とも呼ばれるアクサンドル・ルカシェンコ大統領(66)が5月9日にモスクワで行われたロシアの戦勝記念日祝賀イベントを途中で退場したことから、健康状態をめぐる憶測が広がっている。

イベントに参加中のルカシェンコは右腕に包帯を巻いた姿を写真に撮られている。ベラルーシの政治アナリスト、ドミトリー・ボルクネッツはメッセージアプリ「テレグラム」で、ルカシェンコはプーチンや他の首脳との食事会にも参加せず、「健康上の理由」で突然モスクワを離れたと伝えた。

戦勝記念日のパレードは第二次世界大戦中のナチス・ドイツに対する勝利を祝うイベントだ。プーチンは演説で、2022年2月にウクライナに侵攻したロシアの行動を挑発したのは欧米諸国だと非難した。

戦争中であることと、軍の人員や装備の損耗から、パレードが行われるかどうかは不透明だった。実際パレードは規模が縮小されており、参加した戦車はソ連時代の旧式戦車T-34が一台だけだった、と報じられている。

プーチンは心配に違いない

このイベントにはルカシェンコのほかに、7カ国の国家元首が参加した。キルギスのサディル・ジャパロフ大統領、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領、トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領、アルメニアのニコル・パシニャン首相など、ロシアの招待を断れない旧ソ連の国々だ。

電気自動車で祝賀会場入りしたルカシェンコは、再び電気自動車で空港に向かったが、救急車に付き添われていたという。

ベラルーシの政治アナリストでコンサルタント会社センス・アナルティクスの創設者アルチョム・シュライブマンは、ルカシェンコの健康に関する噂は何年も前から何度もあり、なかにはルカシェンコは「死にかけたが、なんとか持ちこたえた」と言われたときもあったとテレグラムを通じて本誌に語った。

「今回は、いかなる憶測も信じられない」とシュライブマンは述べ、事実がすべて明らかになるまで、プーチンがどれほど心配しているかを知るすべはない、と付け加えた。

だが、ルカシェンコの欠席は目立った。それは、ウクライナとの戦争においてロシアを支持しているのがベラルーシだけで、「その場で最も重要な同盟国」だったからだ、とシュライブマンは指摘した。参加した他の国の首脳は、ロシアの戦争に対する立場をそれほど単純明快に支持しているわけではない。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中