人口減少の中国は世界最大の不妊治療市場 独身女性の体外受精も一部で解禁
中国にある官民のIVF取り扱い施設は539カ所。NHCは2025年までに230万人当たりに1カ所の割合で設置する方針で、実現すれば施設数は600カ所を超える。
中国のIVF市場は治療、医薬品、関連機器を含めて25年には足元の497億元の2倍近い854億元に達するとの調査結果もある。
中国のIVF施設に製品やサービスを供給しているメルク・チャイナのマネジングディレクター、ビビアン・チャン氏は、経済的にはあまり豊かでない内陸部の都市でも、北京や上海と似たような不妊治療施設の整備が急速に行われていると述べ、この分野で満たされない膨大な需要がある以上、中国のIVF市場の先行きを「とても楽観している」と付け加えた。
中国では男性優位の社会構造や独身女性の妊娠に対する偏見、包括的な調査が存在しない点などから、近い将来IVFを巡る政府の方針が変更されたとしても、総需要とその後の需要拡大ペースを把握するのは難しい。
しかし手掛かりはある。
不妊治療クリニックや技術に投資しているリチャージ・キャピタルのカミラ・カゾ氏は、中国国外で中国人女性に年間で50万のIVFサイクルが提供されていると語った。これは中国国外におけるIVFサイクルの3分の1に相当する。
広がる選択肢
米国ではIVFサイクルの平均成功率は52%。これに対して北京の不妊治療専門病院のディレクター、リン・ハイウェイ氏によると、中国の場合、女性が受けるストレスの高さや平均出産年齢の上昇などのため成功率は30%強しかない。
人口問題の専門家は、中国には所得の低迷や教育費の高さ、社会的な安全網の不備、男女格差といったもっと関心を払うべき別の要素があるので、不妊治療サービスを提供しても人口減少の解決にはつながらない、とも主張している。
それでもIVFを全面解禁すれば、一定の影響は及ぼしそうだ。
リン氏の試算では、既に中国でIVFを通じて生まれた子どもは30万人前後と、新生児全体の約3%を占める。
同氏は「近くこれに関連した政策が打ち出され、子どもをほしがっている多くの人々を満足させ得ると信じている」と語った。
確かに中国では近年、出産をあきらめたり先送りしたりする女性も増えてきたとはいえ、全体的に見れば母親になりたい女性はなお多い。
湖南省出身で国際金融論を専攻する22歳の大学生ジョイ・ヤンさんは、テレビでIVFの話を最初に耳にした時、中国全土で解禁してほしいと思ったと話した。そうなればパートナーは探さなくとも金銭面の条件次第で子どもが持てるからだ。
「結婚はしたくないが、それでも子どもはほしいと思う相当数の女性はいる。私はIVFを選択するかもしれない」と語った。
(Farah Master記者、Xiaoyu Yin記者)