最新記事
英王室

70年間待った男、チャールズ3世──新英国王の素顔とこれまでの歩み

THE CROWN AT LAST

2023年5月8日(月)12時30分
ジャック・ロイストン(英王室担当)
チャールズ3世

昨年11月にウィンザー城の狩猟場でもある自然豊かな王立公園のパークレンジャーに就任し、環境保護派の面目躍如 CHRIS JACKSON/GETTY IMAGES

<史上最長の皇太子期間を経てチャールズ3世が戴冠。ダイアナ妃との破局とその悲劇的な死を乗り越えた新国王は、21世紀の英王室とイギリスをどう変えるのか>

なにしろ70年も待たされたのだ。5月6日の戴冠式に臨んだチャールズ3世(74)の胸に、感慨と同時に複雑な思いが去来したのは間違いない。母エリザベスの戴冠式が行われた1953年、彼はまだ4歳だった。

前途は厳しい。外からは帝国時代の負の遺産の清算を迫られ、内では実の息子(ヘンリー王子)に家庭内の不和や王室の人種差別的な体質を暴かれて赤っ恥をかいた。

そもそもチャールズ自身がスキャンダルまみれだ。故ダイアナ妃との結婚生活が破綻したのも、カミラ・パーカー・ボウルズ(現王妃)との不倫が原因だった。ついに戴冠となったチャールズの素顔とこれまでの歩みを振り返ってみよう。

【動画】新英国王チャールズ3世、戴冠の瞬間

◇ ◇ ◇


■ 若かりし日からの情熱

よく知られているように、チャールズは若い頃から環境問題に取り組んできた。プラスチック製品の使い捨てによる環境汚染の問題に初めて言及したのは1970年のことだ。当時の彼は言っている。「誰もが毎日約900グラムのごみを出している。そしてこの国には5500万の人がいて、自然には分解されないプラスチック容器や使い捨てボトルを使っている。何とかしないと、いずれはごみの山に埋もれてしまう。それくらいは容易に想像できる」

それから50年後の2020年には、こう言った。「(当時は)ああいう発言だけでも変人扱いされた。(チャールズの私邸である)ハイグローブの敷地内にアシ原を利用した汚水処理システムを導入したときも、みんな、あきれていた」

一方、76年には慈善団体の「プリンス・トラスト」を設立し、恵まれない若者の就業・起業を支援してきた。2020年9月時点で、この団体が支援した若者は100万人を超えていた。

昨年、イギリス唯一の黒人向け全国紙「ザ・ボイス」のゲスト編集長に招かれたとき、彼は多様なコミュニティーを支援するプリンス・トラストの役割を自賛して、こう書いた。

「私は76年にプリンス・トラストを立ち上げたが、当時から起業支援の事業をやっていた。そこでは社会から疎外された、主として黒人コミュニティー出身の若者たちに起業してもらい、その優れた能力を発揮できるよう資金援助を行ってきた」

「以来、プリンス・トラストは黒人の人々が経営する多くの企業の成長を助けている。その成功例のいくつかを、今回のザ・ボイス特別版で紹介できることを誇りに思う」

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-解任後に自殺のロシア前運輸相、横領疑惑で捜査

ビジネス

中国5カ年計画、発改委「成果予想以上」 経済規模1

ワールド

焦点:マスク氏の新党構想、二大政党制の打破には長く

ビジネス

6月工作機械受注は前年比0.5%減=工作機械工業会
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中