最新記事

ウクライナ情勢

ロシアが中国製の自爆型ドローン「ZT-180」を欲する理由

How China's ZT-180 Drones Could Change Russia's Fortunes in Ukraine War

2023年3月1日(水)16時30分
エリー・クック

キーウ市民を再びドローンが襲う?(ロシアのドローン攻撃でキーウ上空に飛来したイラン製「シャヘド136」とみられる無人機、2022年10月17日)Roman Petushkov-REUTERS

<報道によれば、ロシアは中国製の「カミカゼ・ドローン」を100機、導入する可能性がある。それも、世界がまだ見たことがない試作機だ。イラン製ドローンによるインフラや民間施設攻撃の「成功体験」をより大規模に再現したいからだ、と専門家は言う>

ドローン専門家によれば、中国製の「カミカゼ」ドローンがウクライナで、首都キーウをはじめとする民間拠点に自爆攻撃をおこなうために使われる可能性があるという。

ドイツ誌シュピーゲルは2月23日、「西安冰果智能航空科技」という中国企業が、「カミカゼ・ドローンの大量生産」についてロシア軍と協議していると報じた。

シュピーゲルによれば、ロシア国防省は4月までに、最大50キロの弾頭が搭載可能なドローン「ZT-180」のプロトタイプ100機の納入を受ける可能性がある。ただし、冰果の広報担当者はヴァイス・ワールド・ニュースの取材に対し、「ロシアと商業的な関係はない」と否定している。

アントニー・ブリンケン米国務長官は2月20日、中国がロシアに「殺傷兵器の支援」を行う可能性があると発言し、中国当局は強く否定した。

ZT-180ドローンの詳細はほとんど確認されていないが、NATOでドローンのアドバイザーを務めるジェームズ・ロジャースによれば、西側のアナリストの間では、「可能な限り高い精度を持つ」使い捨ての徘徊型兵器が、「重要目標を確実に破壊するために送り込まれる」可能性があると認識されているという。

民間と軍事を問わない「汎用性」

ZT-180は、イラン製のドローン「シャヘド136」と同等の航続距離を持つと見られる。ロシア領内または隣国ベラルーシから展開され、「キーウを含むウクライナの重要目標をたやすく攻撃」できる、とロジャースは述べる。

ロジャースは本誌の取材に対し、この種のドローンは非常に「汎用性が高い」ため、軍事目標だけでなく、キーウの民間施設に対しても使用できると指摘した。

そうした可能性は、以前より高まっていると見られる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロジャースの言う「報復攻撃」を通して「非常に強い政治的メッセージを送りたいと考えている」からだ。もしZT-180の納入を受ければ、ロシアはこの新しいドローンを数カ月中に配備し、政治的圧力を高めることができるとロジャースは言う。

まだほとんど知られていないドローンをロシアが受け取るかもしれないという報道が本当なら、ロシアがドローン攻撃の成功に自信を持っていることを示している、とロジャースは分析する。

ロシア軍は開戦以来、イラン製のシャヘド131と136を使い、ウクライナの軍事施設と民間拠点を狙い撃ちしてきた。この冬には、ウクライナの重要なエネルギーインフラを破壊して停電や断水で市民生活を極限に追い詰めた。ロシアはこれを「成功」と見なしている可能性が高い、というのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、フェンタニル巡る米の圧力に「断固対抗」=王外

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中