最新記事
中国

水増しされていた中国の人口、「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出

Falsified Population

2023年3月15日(水)15時29分
練乙錚(リアン・イーゼン、香港出身の経済学者・コラムニスト)
ポスター

かつては中国各地に一人っ子を愛する家族像を奨励するポスターが(1985年、成都) PETER CHARLESWORTHーLIGHTROCKET/ GETTY IMAGES

<労働人口が増え続ければ経済は栄える...。「14億人市場」という売り文句で海外からの投資を呼んできたが、中国の改ざん、捏造の流儀に目をつぶったほうも軽率>

多産多死の時代から多産少死の人口増加期を経て、やがて少産少死の安定期に入る。このプロセスを「人口転換」と呼ぶが、その後半では(今の日本のように)少子高齢化が顕著になり、やがて人口減少の危機を迎えかねない。

それが歴史の常であり、この人口転換からはどの国も逃れられない。まだ人口は増え続けると豪語していた中国政府も、ついにこの1月、従来は「2030年以降」とされていた人口減少が、実は昨年から始まっていたと認めた。

深刻な事態だが、もっと深刻なのは、その背景にある中国ならではの特殊事情だ。

なぜ想定より8年も早く、人口減が始まってしまったのか。中国の人口が「2030年以降」に減り始めるという想定は中国政府の発表してきた過去の公式統計に基づくもので、大多数の国際機関や外国政府もこれを信じ、これによって中国の将来性や国力を推定してきた。

そもそも平時には、一国の人口が激変する事態は考えにくい。しかるべき統計データがあれば、先の予想は十分に可能だ。なのに、なぜ8年も計算が違ったのか。

どう見ても不自然で、基のデータがおかしかったと考えざるを得ない。中国政府の発表する公式統計の信憑性には以前から疑問が提起されていたが、人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあったと思われる。

かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。

なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきたからだ。

一方で組織内には腐敗が蔓延し、無能な共産党幹部が違法出産を見逃す代わりに私腹を肥やしていた。一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因だった(こちらの記事参照、なお計生委は18年に廃止されている)。

共産党が神話を主導

だが党の指導者──最初は江沢民(チアン・ツォーミン)、次いで胡錦濤(フー・チンタオ)──が旗を振らなければ、データの改ざんがこれほど組織的に行われることはなかっただろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米陸軍、ドローン100万機購入へ ウクライナ戦闘踏

ビジネス

米消費者の1年先インフレ期待低下、雇用に懸念も=N

ワールド

ロシア、アフリカから1400人超の戦闘員投入 ウク

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、11月速報値は約3年半ぶ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中