最新記事
ICT教育

日本の生徒のネット活用度は先進国で最低レベル

2023年3月15日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
ラボの学生たち

諸外国と比較すると日本の学生はネットを積極的に活用できていない SeventyFour/iStock.

<「1人1台端末」の目標はほぼ実現されているが、問題はそれを学習にどう活用するか>

社会のICT(情報通信技術)化が進むなか、教育もICT化しないといけない。そこで文部科学省は、「GIGAスクール構想」を掲げている。「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」というものだ。

1人1台端末により、学校の教授・学習活動の効率は上がり、各人の進度に応じた個別学習も可能になる。動画や音声の教材は、障害のある子が対象の特別支援教育において効果を発揮する。教育において、ICTの恩恵を活用しない手はない。いや、活用しなければならない。黒板、鉛筆、ノートの授業だけでは、情報化社会を生きる人間を育てることはできない。

端末を自宅に持ち帰り個別学習をする、インターネットで調べものをする、電子図書館で本を借りて読む、といった用途も考えられる。日常生活の各場面で端末を使いこなすことは、21世紀型の人間が育つための「隠れたカリキュラム」となる。

学校外となると、よからぬことに使うのでは、という懸念から、端末の持ち帰りを禁止している自治体もある。OECDの国際学力調査「PISA 2018」では、学校外でのコンピューターの用途を問うているが、日本の15歳生徒の回答をみると、「チャットをする」が94%と最も多い(週1回以上の割合)。その次は「趣味の情報閲覧」で91%だ。YouTubeでの動画視聴などだろう。

<表1>は、14の項目のパーセンテージを掲げたものだ。日本とOECD平均との差分が大きい順に並べている。

data230315-chart01.png

日本が国際平均を有意に上回るのは、1人ゲームとチャットだ。コンテンツをアップする、宿題の調べものをする、学校の庶務連絡を閲覧する、という項目では諸外国に大きく水を開けられている。日本の特徴を総じて言うと、積極的な用途でコンピューターを使う生徒が少ない。

今では誰もが、インターネットを使って自分の主張や創作物を世に問うことができる。自分の作品をSNSなどにアップし、万人からのフィードバックを得ることはもっとされていい。端末で学校の宿題の調べものをするなども、普通の光景であって然るべきだ。学校の庶務連絡もネット経由にすれば、教員と生徒・保護者双方の負担が軽減される。紙の連絡帳でやり取りしているようでは、教員の働き方改革もおぼつかない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:高市新政権発足へ 財務省、維新との

ワールド

米軍、コロンビア左翼ゲリラの船舶攻撃 トランプ氏が

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏に領土割譲を促す=関係筋

ワールド

中国の習主席、台湾の野党次期党首に祝電で「国家統一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中