日本の生徒のネット活用度は先進国で最低レベル
諸外国と比較すると日本の学生はネットを積極的に活用できていない SeventyFour/iStock.
<「1人1台端末」の目標はほぼ実現されているが、問題はそれを学習にどう活用するか>
社会のICT(情報通信技術)化が進むなか、教育もICT化しないといけない。そこで文部科学省は、「GIGAスクール構想」を掲げている。「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」というものだ。
1人1台端末により、学校の教授・学習活動の効率は上がり、各人の進度に応じた個別学習も可能になる。動画や音声の教材は、障害のある子が対象の特別支援教育において効果を発揮する。教育において、ICTの恩恵を活用しない手はない。いや、活用しなければならない。黒板、鉛筆、ノートの授業だけでは、情報化社会を生きる人間を育てることはできない。
端末を自宅に持ち帰り個別学習をする、インターネットで調べものをする、電子図書館で本を借りて読む、といった用途も考えられる。日常生活の各場面で端末を使いこなすことは、21世紀型の人間が育つための「隠れたカリキュラム」となる。
学校外となると、よからぬことに使うのでは、という懸念から、端末の持ち帰りを禁止している自治体もある。OECDの国際学力調査「PISA 2018」では、学校外でのコンピューターの用途を問うているが、日本の15歳生徒の回答をみると、「チャットをする」が94%と最も多い(週1回以上の割合)。その次は「趣味の情報閲覧」で91%だ。YouTubeでの動画視聴などだろう。
<表1>は、14の項目のパーセンテージを掲げたものだ。日本とOECD平均との差分が大きい順に並べている。
日本が国際平均を有意に上回るのは、1人ゲームとチャットだ。コンテンツをアップする、宿題の調べものをする、学校の庶務連絡を閲覧する、という項目では諸外国に大きく水を開けられている。日本の特徴を総じて言うと、積極的な用途でコンピューターを使う生徒が少ない。
今では誰もが、インターネットを使って自分の主張や創作物を世に問うことができる。自分の作品をSNSなどにアップし、万人からのフィードバックを得ることはもっとされていい。端末で学校の宿題の調べものをするなども、普通の光景であって然るべきだ。学校の庶務連絡もネット経由にすれば、教員と生徒・保護者双方の負担が軽減される。紙の連絡帳でやり取りしているようでは、教員の働き方改革もおぼつかない。