最新記事
ウクライナ情勢

国際関係論の基礎知識で読む「ウクライナ後」の世界秩序

THE POTENTIAL FOR CONFLICT

2023年3月3日(金)18時00分
マシュー・クレイニグ(大西洋評議会スコウクロフト国際安全保障センター副所長)
ロシア

REUTERS/Kirill Braga

<現実主義・リベラリズム・構成主義の3つの視点で分析する、第3次世界大戦が起きるシナリオと「次なる世界」>

昨年9月の新学期から、世界中で大勢の学生が初めて国際関係論を学んでいる。近年の世界の変化に敏感な教授であれば、国際関係論の主な理論が大国間の紛争が迫っていることを警告していると教えているだろう。

何十年もの間、国際関係論は楽観的になれる理由を示してきた。主要国はおおむね協力的な関係を享受し、武力衝突を起こさずに自分たちの相違を解決できるだろう、と。

国際関係論のリアリズム(現実主義)によれば、冷戦下の二極世界と冷戦後のアメリカが支配する一極世界は比較的単純なシステムで、誤算による戦争は起きにくい。核兵器は紛争のコストを引き上げて、大国間の戦争を考えられないものにした。

一方、リベラリズムは、制度、相互依存、民主主義の3つの変数が協力を促進し、紛争の緊張を緩和すると考える。第2次大戦後に設立され、冷戦後も拡大し、信頼されている国際機関や協定(国連、WTO、核拡散防止条約など)は主要国が平和的に対立を解決する場を提供してきた。

さらに経済のグローバル化によって、武力紛争はあまりにもコストが高くなった。商売が順調で誰もが豊かなのに、なぜ争うのか。この理論でいけば、民主主義国はあまり争わずに協力することが多い。過去70年間に世界で起きた民主化の大きな波が、地球をより平和な場所にした。

そして社会構成主義は、新しい考えや規範、アイデンティティーが国際政治をよりポジティブな方向に変えてきたとする。かつては海賊行為や奴隷、拷問、侵略戦争が日常的に行われていた。だが大量破壊兵器の使用に関する人権規範が強まり、タブー視が高まって、国際紛争に歯止めを設けた。

とはいえ残念ながら、平和をもたらすこれらの力のほぼ全てが、私たちの目の前でほころびつつあるようだ。国際関係論において、国際政治の主要な原動力は米中ロの新たな冷戦が平和的に行われる可能性が低いことを示唆している。

まず、パワーポリティクスから見ていこう。私たちは、より多極化した世界に入りつつある。確かにアメリカは、ほぼ全ての客観的な指標で依然として世界をリードする主要国だが、中国は軍事力と経済力に関して強力な2番手に成長している。ヨーロッパは全体として経済と規制の巨人だ。攻撃的なロシアは、地球上で最大の核兵器を備蓄する。インドやインドネシア、南アフリカ、ブラジルなど開発途上世界の主要国は、非同盟路線を選択している。

リアリズムは、多極体制は不安定で、誤算から大きな戦争が起こりやすいと主張する。第1次大戦はその典型的な例だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU首脳、米中との競争にらみ対策協議 競争力維持へ

ビジネス

トランプ政権、対中テック規制を棚上げ 米中首脳会談

ビジネス

仏サノフィ、ハドソンCEOを解任 後任に独メルクの

ビジネス

英GDP、第4四半期は前期比0.1%増 通年は1.
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中