日本の学校では、問題解決能力も批判的思考も養われていない
表を見ると、全員理解や批判的思考を重視する度合いに差があるが、この2つのマトリクス上に調査参加国(48カ国)を位置付けると、日本の位置に驚かされる。<図2>を見てほしい。
両軸とも日本は他国とかけ離れている。学習指導要領で習得の進度(学年進行)が厳格に定められているためか、形式的な履修主義がはびこり、就学の形骸化の問題も起きやすい。授業時間内での全員理解にこだわる必要はないが、習得が不十分な生徒には「個に応じた指導」も必要になる。児童生徒の背景が多様化しているだけになおさらだ。2021年1月の中央教育審議会答申が言うように、令和の時代の学校では「個別最適な学び」に重点が置かれることになっている。
批判的思考の訓練も欠かせない。これがないと為政者に追随するだけの従順さしか身に付かず、民主主義国家の基盤が揺らぐことになる。判的思考を育む題材として、校則やインターネット上のフェイクニュースなど色々ある。自身で情報を集め、妥当性や真実性を検証する「ファクトチェック」をさせるのもいいだろう。
こうした工夫を凝らすには、授業を「練る」時間が必要になる。日本の教員の勤務時間は世界最長で、仕事の半分以上が授業・授業準備以外の業務だ。「主体的・対話的な学び」や「個別最適な学び」をいくら推奨しても、教員が授業に注力できる環境を整えないと、絵に描いた餅で終わる。
<資料:OECD「TALIS 2018」>