カトリックが避妊をついに容認? 改革に踏み切れば13世紀以来の見直し
RETHINKING BIRTH CONTROL
カトリック保守派は昨年12月、この文書について協議するために集まった。英オックスフォード大学のジョン・フィニス名誉教授(法学・法哲学)は講演を行い、教義の遵守は「カトリック信仰を真実として堅持する上で不可欠であり不可逆的な要素」だと主張した。
この状況でフランシスコ教皇はどうするのか。避妊に関する教義の見直しをめぐる記者の質問に対して教皇は「問題を前にしたとき、あらかじめ否認するような態度では神学を論じられない」と回答。「生命の神学的倫理」については「会議(生命アカデミー)の参加者は義務を果たした。教義の前進を図っている」と評価した。
フィニス名誉教授の立場からすれば、フランシスコ教皇はカトリック教徒ではないように見える。だとすれば、他の多くの人も「真の信者」ではないことになる。2014年の世論調査によれば、フランスやブラジル、スペインなどでは、カトリック教徒の90%以上が産児制限に賛成していた。
16年の世論調査でも、毎週ミサに参加している熱心な信者の中で避妊は非道徳的と答えた人は13%にすぎなかった。
過半数が支持しているから、その主張が正しいとは限らない。だが避妊については、カトリック教徒を自認する人々の過半数の意見が正しいと考える根拠が十分にある。
性行為と妊娠・出産に関する中世以来の考え方からは、とっくに脱却していい。
ピーター・シンガー
PETER SINGER
プリンストン大学教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体TheLife You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。