食事をしない若者が増えている、その深刻な背景
コロナ禍のなかで「1日ゼロ食」という人の数も増加している Suradech14/iStock.
<健康な生活の根幹である「食」を、若年層の多くが節約のために疎かにしている>
日本人のタンパク質の摂取量が1950年代と同水準になっているという(日経新聞WEB、2023年2月9日)。記事のグラフを見ると、2019年の1日の摂取量平均は70グラムほどで、戦後初期の頃と同じくらいだ。国の推奨値は超えているものの、良好な健康状態を維持するのに必要な目標値には届いていないとされる。
物価高に見舞われている2023年現在では、たんぱく質の摂取量はもっと落ちているだろう。肉や魚は値上がりし、安価な米や麺類でお腹を満たす人が増えているのではないか。炭水化物の摂り過ぎは肥満につながるので、栄養の偏りによる健康不良も懸念される。
偏食を通り越して欠食、すなわち食事をしないという人もいる。2011年の総務省『社会生活基本調査』によると、調査対象の平日に食事をした国民(15歳以上)の割合は99.4%。裏返すと、0.6%の人は1日中何も食べなかったことになる。この数値は2016年では0.7%、2021年では1.8%と上がってきている。コロナ禍もあってか、近年の伸び幅は大きい。
年齢層別に見ると、もっと高い値が出てくる。<表1>は、1日ゼロ食の人の割合を年齢層別に示したものだ。
1日1度も食事をしない人の割合は、若年層ほど高い。お金がなかったり、減量志向が強かったりするためだろう。15~24歳を見ると、2016年の0.6%から2021年の4.0%まで跳ね上がっている。25人に1人が「1日ゼロ食」という衝撃的なデータだ。
コロナ禍の影響を推測するのは容易い。国民全体に生活困窮が広がっているが、とりわけ若年層では1日ゼロ食の者が無視できない数字になってきている。最近、風呂なしの物件が若者の間で人気と聞くが、シンプル志向の強まりといった肯定的なトーンで語るべきではない。貧困化により生活の基盤の「住」や、生きるための「食」をも切り詰めなければならない。まぎれもない社会問題だ。