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フィリピンは結局「中国寄り」か反中か──南シナ海・対中攻防史

A RISKY BET FOR THE US

2023年2月9日(木)11時05分
ハワード・フレンチ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

フィリピンに対しては、米中の武力衝突が勃発した際に国内の滑走路の使用許可を出すことを期待している。ハワイや米本土など遠方からの補給が間に合わない戦争の初期段階を乗り切るカギは、米軍の戦闘機や爆撃機をできるだけ広く分散させておくことだと考えられているためだ。

アメリカや中国、台湾、南シナ海周辺諸国、さらには、はるかかなたの国々まであらゆる地域の人々が台湾海峡での戦争回避を祈るべきだ。

世界最強の2カ国が衝突すれば、その影響は予測不可能。唯一予想できるのは、軍事的な破壊力が想像を絶する次元に達し、あらゆる地域の人々の生活に壊滅的な打撃を与えるということ。イメージしにくいなら、米中の衝突よりずっと小規模なウクライナ戦争が世界中に及ぼしている影響を考えてみるといい。

フィリピンや南シナ海周辺諸国の近年の歴史が示すように、振り子のように過去に何度もアメリカに近づいては離れていった国は、いったん近づいてもいずれまた離れていく。

親しくしてきた弱小国がより高い値を付ける相手になびくリスクを排除できないのは、強者のジレンマだ。

フィリピンの路線変更を知ったアメリカの戦争プランナーは、現時点では明るい気分だろう。そして、その気分は今後もしばらく続く。

だがドゥテルテが示したように、いつでも方向転換できるという贅沢を彼らが手放すことはない。

From Foreign Policy Magazine

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