韓国戦車が欧州の戦場を埋め尽くす日
Tanks From South Korea
K2を気に入っているのは、調達契約を結んだポーランドだけではない。トルコの主力戦車「アルタイ」も、K2の派生型だ。スロバキアなどの国々も、旧式のソ連製T72戦車に代わる選択肢について韓国と協議を行っている。
東欧諸国は、保有する旧ソ連時代の古い戦車の多くを既にウクライナに送っている。これらの国々にとって、戦車のアップグレードとともに兵器の調達先を増やす手段として、韓国からの戦車調達はうってつけかもしれない。
ノルウェーでも新たな主力戦車の導入に当たってK2が最終候補に残り、昨年レオパルト2A7との比較テストが行われた。その後、軍制服組トップが主力戦車の購入中止を提言する混乱もあって執筆時点で結論は出ていないが、ノルウェーはポーランドに倣って、ハンファディフェンスにK9自走砲を28両発注。フィンランドやエストニアなど、K9を導入した欧州諸国の仲間入りを果たした。
もちろん、ヨーロッパ全体がすぐに戦車の調達先を韓国に切り替えるとは考えにくい。韓国からの戦車調達には、いくつもの問題が見え隠れする。
その最も大きなものの1つは、韓国がロシアを刺激するのを恐れていることだ。韓国は、ウクライナに殺傷兵器を供与することを断固拒否している。しかしアメリカへの弾薬輸出については、それが後にウクライナに渡るかもしれないと知りながらも、同意する柔軟性を見せていると報じられている。
さらに、韓国はヨーロッパから地理的に遠い。近隣諸国からの兵器調達を好む国々には、その点がネックになるかもしれない。
だが、技術移転と現地生産に前向きな姿勢は、今後の武器販売で韓国に有利に働くだろう。前述のとおり、ポーランドと現代ロテムおよびハンファディフェンスとの契約には、ポーランド国内に生産拠点を置くことが含まれている。
これによってポーランドは、26年までにK2PLとK9の国内生産を開始し、ポーランド軍や他のヨーロッパ諸国のK9について修理やメンテナンスが行えるようになる。そうなれば諸外国の政策変更によって受ける影響は小さくなり、修理に必要な部品も確実に入手できる。
アメリカをはじめ多くの先進国の防衛産業が深刻な生産数不足に直面しているなかで、韓国は確実な大量生産体制を維持している。こうした姿勢に加えて、ヨーロッパに生産拠点を置こうという韓国政府の意向を合わせれば、大きなセールスポイントになるはずだ。この先各国の需要を満たす能力を維持できるかどうか分からないドイツの防衛大手ラインメタルに比べて、はるかに頼れる存在になる。