最新記事

韓国

韓国戦車が欧州の戦場を埋め尽くす日

Tanks From South Korea

2023年2月7日(火)14時10分
ブレーク・ハージンガー(アメリカン・エンタープライズ研究所)

230214p30_KAN_02.jpg

レオパルト2のウクライナへの供与を先延ばししたショルツは批判を浴びた FABIAN BIMMERーREUTERS

K2を気に入っているのは、調達契約を結んだポーランドだけではない。トルコの主力戦車「アルタイ」も、K2の派生型だ。スロバキアなどの国々も、旧式のソ連製T72戦車に代わる選択肢について韓国と協議を行っている。

東欧諸国は、保有する旧ソ連時代の古い戦車の多くを既にウクライナに送っている。これらの国々にとって、戦車のアップグレードとともに兵器の調達先を増やす手段として、韓国からの戦車調達はうってつけかもしれない。

ノルウェーでも新たな主力戦車の導入に当たってK2が最終候補に残り、昨年レオパルト2A7との比較テストが行われた。その後、軍制服組トップが主力戦車の購入中止を提言する混乱もあって執筆時点で結論は出ていないが、ノルウェーはポーランドに倣って、ハンファディフェンスにK9自走砲を28両発注。フィンランドやエストニアなど、K9を導入した欧州諸国の仲間入りを果たした。

もちろん、ヨーロッパ全体がすぐに戦車の調達先を韓国に切り替えるとは考えにくい。韓国からの戦車調達には、いくつもの問題が見え隠れする。

その最も大きなものの1つは、韓国がロシアを刺激するのを恐れていることだ。韓国は、ウクライナに殺傷兵器を供与することを断固拒否している。しかしアメリカへの弾薬輸出については、それが後にウクライナに渡るかもしれないと知りながらも、同意する柔軟性を見せていると報じられている。

さらに、韓国はヨーロッパから地理的に遠い。近隣諸国からの兵器調達を好む国々には、その点がネックになるかもしれない。

だが、技術移転と現地生産に前向きな姿勢は、今後の武器販売で韓国に有利に働くだろう。前述のとおり、ポーランドと現代ロテムおよびハンファディフェンスとの契約には、ポーランド国内に生産拠点を置くことが含まれている。

これによってポーランドは、26年までにK2PLとK9の国内生産を開始し、ポーランド軍や他のヨーロッパ諸国のK9について修理やメンテナンスが行えるようになる。そうなれば諸外国の政策変更によって受ける影響は小さくなり、修理に必要な部品も確実に入手できる。

アメリカをはじめ多くの先進国の防衛産業が深刻な生産数不足に直面しているなかで、韓国は確実な大量生産体制を維持している。こうした姿勢に加えて、ヨーロッパに生産拠点を置こうという韓国政府の意向を合わせれば、大きなセールスポイントになるはずだ。この先各国の需要を満たす能力を維持できるかどうか分からないドイツの防衛大手ラインメタルに比べて、はるかに頼れる存在になる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英生産者物価、従来想定より大幅上昇か 統計局が数字

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一

ワールド

対ロ軍事支援行った企業、ウクライナ復興から排除すべ

ワールド

米新学期商戦、今年の支出は減少か 関税などで予算圧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中