「格差地獄」のベネズエラ──富裕層は空中レストランからスラム街を見下ろしながら食事を楽しむ
A Hell of Inequality
教育崩壊がつくる貧困
ベネズエラは10年代前半まで中南米で最も格差の小さい国だったが、今では南北アメリカ大陸で最も格差の大きい国になった。現在は、最も裕福な10%の国民が最も貧しい10%に比べて70倍の所得を得ている。
ベネズエラはかつて、国民が1年間で平均11キロもやせる食料危機とハイパーインフレに直面した。食料不足はその後やや改善したが、栄養失調の人が国民に占める割合はアメリカ大陸で2番目に高い。
貧困はいまだに深刻だ。ENCOVIは、教育や医療制度の崩壊といった要因が引き起こす貧困を「社会的理由による貧困」と呼ぶ。その状態にある世帯は19年には全体の31%だったが。昨年は42%に増えた。
ENCOVIのもう1人の責任者であるルイス・ペドロ・エスパーニャは、社会的貧困が増えた大きな原因は、教育制度の崩壊だと指摘する。
ベネズエラでは教師不足や校舎の老朽化、給食の不足などが問題になっている。今の緩やかな景気回復が続いても、貧困の改善はなかなか進まないだろうと、エスパーニャは指摘する。しかも多くのエコノミストは、今年のベネズエラ経済の成長率は減速すると予想している。
「貧困は今後1〜2年で再び悪化するだろう」と、エスパーニャは言う。大多数の国民が貧困にあえぐ一方で、一部の富裕層が空中レストランでスラム街を見下ろしながら食事を楽しむ「格差地獄」は、まだまだ続く。