地球の深度150キロに新たな層が検出される プレートテクトニクスの考え方に影響
溶融しているからアセノスフェアが柔らかいわけではない
チームはさらに、PVG-150と地殻変動との関連を調べた。直感的には、柔らかいPVG-150の層が広がる地域ほど、上部のプレートが活発に移動するようにも思える。
しかし、結果は意外なものだった。分析の結果、PVG-150の存在するエリアとプレートの動きには、相関関係がみられないことが判明した。フア博士はヴァイスに対し、溶融部分は「アセノスフェアの大域的な粘性に実質的な影響を与えていない」との見解を述べている。
では、プレートの移動を促しているとされるアセノスフェアは、なぜ柔らかいのだろうか。フア博士は「比較的軟弱なアステノスフェアの性質は、融解によるものではなく、固い岩石が物理的に変形することで生じている可能性が高いのです」と説明している。
溶融層と直接関係のないところで岩石に高い圧力が加わり、固体のまま物理的に変形しているのだという。
プレートテクトニクスのモデルの改善に貢献
CNNによると、論文の共著者であるブラウン大学のカレン・フィッシャー教授(地質科学)は声明を通じ、「この研究は、アステノスフィア(構造プレートの下にあり、プレートの動きを引き起こしている軟弱なマントルの層)がなぜ柔らかいかという本当の理由を理解するための基礎となります」と述べている。
フィッシャー教授はまた、今回の研究は「つまるところ、温度や圧力の変化など他の要因がアステノスフィアの強度に影響し、プレートテクトニクスが起きうるほど軟弱になるのだという事実を示す証拠となるものです」と語っている。
ヴァイスは今回の研究により、地球の新しい層が明らかになっただけではなく、プレートテクトニクスのモデルに影響を与える可能性があると指摘している。溶けた岩石がプレートの移動に与える影響が非常に限定的であることから、この層の存在を考慮せずにモデルを再構築し単純化できる可能性があるという。
溶解した層がこれまでの常識に反して世界中に分布していることに加え、プレートテクトニクスへの影響を同時に分析した研究となった。