地球の深度150キロに新たな層が検出される プレートテクトニクスの考え方に影響
地球の深さ150キロの領域に溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布していることがわかった Vadim Sadovski-shutterstock
<地球の深さ150キロの領域に、溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布しており、プレートテクトニクスのモデルに影響を与える可能性があることがわかった......>
テキサス大学オースティン校の研究チームが、地球の深さ150キロの領域に、溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布していることを検出した。
こうした性質の層はこれまで一部地域で確認されていたが、例外的な存在だとみなされてきた。今回の研究により、地球の44%以上の広い領域に存在することが判明した。
また、この層の分布域とプレートテクトニクスの発生領域に相関がみられないことから、溶けた岩石の層が従来考えられていたほど大陸の移動に関与していないことも分かってきた。
このため、プレートの移動をモデル化する際、軟岩質の層の存在をほぼ無視できる可能性がある。将来的にプレートテクトニクスのモデルを改善し簡素化できるのではないかと期待されている。
研究はテキサス大学オースティン校ジャクソン地球科学大学院のジュンリン・フア博士(地球科学)らのチームが進めた。研究論文が査読付き学術誌『ネイチャー・ジオサイエンス』に掲載され、2月6日にオンラインで公開されている。
プレートを動かす柔らかい層の一部に、溶融した岩石の層を発見
私たちはふだん、地球の最も外側の部分にあたる地殻の上に暮らしている。その下には、マントル、外核、内核が存在する。
今回新たに発見された溶融層は、地表から約150キロ下に位置する。これは、上部マントルの一部に相当する領域だ。プレートとほぼ同義の硬い「リソスフェア」と呼ばれる領域の下に位置し、柔らかく流動的な「アセノスフェア」の一部を構成している。地殻プレートの移動を引き起こしている部分だ。
これまでにも、アセノスフェアの一部に溶けた岩石の層が存在する例は知られてきたものの、局所的で例外的な事象だと考えていた。今回の研究では、PVG-150と名付けられたこの層が地球の44%以上という広い範囲に広がっていることが明らかになった。
「CTスキャンのように」地震波から内部を解析
地球内部を直接調査することは難しい。そこでフア博士たちのチームは定石に則り、地震波が地球内部を伝わる速度を調べることで内部の層を解析した。フア博士は米CNNに対し、「病院でのCTスキャンにも似ていますね」と例えている。
地震波が溶けた層を通過する際、その速度は緩やかになる。チームは世界各地の地震計から700件以上の観測データを集め、伝播速度の違いを利用してアステノスフェアの世界地図を作成した。
すると、これまで局所的な存在だと考えられていた溶けた岩石の層は、地球の広い地域に分布していることが判明した。
研究を主導したフア博士は、米メディアのヴァイスの取材に対し、「いかに広範囲に及んでいるかということに、少し驚きました」と語っている。
研究チームはこのゾーンを「PVG-150 (Positive Velocity Gradient at 150 km)」と命名した。