最新記事

動物

「左利きはストレスに弱い」──犬の「利き手」と性格に関連性があるという研究結果

Is Your Dog a Leftie?

2023年1月25日(水)12時24分
デボラ・ウェルズ(英クイーンズ大学ベルファスト校准教授)
犬

「お手」と言われて犬が差し出すのは利き足であることが多い ALEKSANDR ZOTOV/ISTOCK

<「利き手」は人間だけではなく、あらゆる哺乳類にあることが最新研究で判明。犬の利き足が分かれば、ストレス状態などの感情を理解してあげることができる>

たいていの人には利き手がある。世界の人口の90%近くは右利きで、10~13%が左利き。左利きの人は、男性が女性の3倍多い。両利きの人はごく少数だ。

わりと最近まで、利き手があるのは人間だけだと考えられていた。だが動物を対象にした研究から、今ではあらゆる哺乳類に利き手があるらしいことが分かっている。

ペットの犬に「利き足」があるかどうかを調べるためにも、さまざまな研究が行われてきた。容器の中から食べ物を取るときにどちらの足を出すか、階段を下りるときの第一歩はどちらか、「お手」の指示を受けて差し出すのはどちらかといったものだ。

これまでの研究結果に、多少のばらつきはある。しかし最近の分析から、犬は両利きの場合よりは、はっきりした利き足を持っている場合のほうが多いとみられている。

ただし人間と違って、利き足のある犬がそうでない犬より圧倒的に多いわけではない。利き足があるという特性は犬全体に共通するわけではなく、個々の犬のもののようだ。

過去の研究から、犬が使いやすい足は、与えられる課題の難度などによって変わることが分かっている。

例えば、しつけに役立つ、かむ犬用玩具「コング」で遊ぶときは、左利き、右利き、両利きの反応がたいてい同じくらい見られる。対照的に反復訓練がものをいう「お手」では、両利きよりも右利きか左利きの反応がかなり多い。

いくつかの研究は、犬の利き足に大きな性差があることを示している。雌は右利きが多く、雄は左利きが多い傾向がある。性差がある理由は明らかではないが、ホルモンや脳の形態の違いによるものではないかとも言われる。

左利きはストレスに弱い

犬の利き足を知ることは、飼い主にとってはとても楽しそうだ。しかし、動物福祉の観点から考えても重要かもしれない。犬の気持ちを理解することにつながる可能性があるからだ。

人間と同じで、犬の左脳(右半身をつかさどる)はポジティブな感情を担っており、右脳(左半身をつかさどる)は恐怖や不安などネガティブな感情に関係している。そのため犬が使う足から、犬の気持ちを推し量ることができる。例えば課題をこなすときに左足を使う犬は、右足を使う犬よりもネガティブな感情を抱いているのかもしれない。

利き足と性格に関連があることも分かっている。両利きの犬は、左右どちらかが利き足の犬より攻撃性が高い。利き足がはっきりしない犬が、録音された雷や花火の音に強く反応したという研究もある。

これらの点は犬の特別な訓練に関係してくる。過去の研究は、優秀な盲導犬になりそうな犬を選ぶときに、利き足が有益な判断材料になる可能性を示している。

利き足を知ることは、ストレスがかかる状況に弱い犬を特定する上でも役立つかもしれない。左利きの犬は右利きよりもレスキュー犬の小屋でストレスを示しやすいという。

動物の福祉がどうあるべきかを考える指標を、利き足だけに頼るのはむちゃというものだ。ただし、他のテスト結果のほか、尾の振り方なども併せて考えれば有益な材料になり得る。

例えば犬は飼い主を見ると、尾を左に振る(ポジティブな感情の表れ)。だが、自分より強そうな犬に対しては右に振る(ネガティブな感情の表れ)。

この分野でさらに研究が進めば、「人間の最良の友」へのより深い気配りや感謝につながるだろう。

The Conversation

Deborah Wells, Reader, School of Psychology, Queen's University Belfast

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

良品計画、今期純利益予想を上方修正 市場予想上回る

ビジネス

TSMC、第1四半期35%増収 AI需要追い風に市

ビジネス

ブラジルの強制労働リストからBYD除外へ、裁判所が

ワールド

韓国・ポーランドが13日に首脳会談、防衛協力拡大な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中