【解説】最新の研究で解明進む、ネアンデルタール人の新事実──そして我々のこと

WHAT MAKES US HUMAN

2023年1月19日(木)13時00分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

230124p42_NDT_02.jpg

従来のネアンデルタール人のイメージ(米フィールド自然史博物館蔵) BETTMANN/GETTY IMAGES

DNAの違いは1.5~7%

多くの「ヒト属」の種はアフリカで誕生し、まずヨーロッパや中東へ、そしてさらに遠方へ移り住んだ。ネアンデルタール人が移動したのは20万年前。現生人類は6万年ほど前に移動した。ネアンデルタール人と現生人類は2万年ほど共存していたが、その後、ネアンデルタール人が絶滅し、現生人類は地球上に生き残った唯一のヒト属の種になった。

「現生人類は6万年前、既にほかのヒト属が生きていた世界にやって来ると、進化のプロセス全体の中では極めて短い期間で、世界の全ての大陸に進出し、あらゆる生態系を支配し、行く先々でことごとく大量絶滅を引き起こした」と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のリチャード・グリーン助教(生体医工学)は指摘する。

「ネアンデルタール人はそのようなことを行わなかった。その点では、ほかのヒト属も同様だ。この違いを生み出した遺伝学的・生物学的変化はどのようなものだったのか」

現生人類とネアンデルタール人の類似点が明らかになるにつれて、この問いに答えるためのヒントが見えてきている。

21年のグリーンらの研究によると、現生人類とネアンデルタール人のDNAの違いはごくわずかだ。その違いは1.5~7%にすぎないという。

1つの可能性は、このごくわずかな遺伝学上の違いが現生人類の成功の要因だというものだ。そのDNAのおかげで現生人類の脳には、大規模で組織的な文明を築く能力や、敵の多い不確実な世界で生き延びるために必要なリスクを取る能力が備わったのかもしれない。

しかし、DNAの違いはあまりに小さく、大きな影響を生んでいない可能性もある。もしそうであれば、ネアンデルタール人が絶滅して、現生人類が生き残ったのは、運命のいたずら、言い換えれば些細な偶然が原因だったのかもしれない。状況が違えば、現生人類ではなく、ネアンデルタール人が地球上で繁栄を謳歌したのだろうか。

この問いの答えはまだ分からない。しかし、新しい手がかりが続々と登場している。

進化の系統樹で、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)に至る枝と、ホモ・サピエンス・サピエンス(現生人類)に至る枝が分岐したのは、ざっと40万~45万年前のことだった。

アフリカを出発したネアンデルタール人は、ヨーロッパや中東を経て、シベリア南東端に到達した。その後、ヨーロッパの氷河期を生き延び、最終的には35万年にわたり存続した。これは、現生人類が誕生してから今日までの期間よりはるかに長い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は

ワールド

韓国、米のAI半導体関税の影響は限定的 今後の展開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中