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難病と共に生きるということ──セリーヌ・ディオンも患う「スティッフパーソン症候群」抱える私の「生涯の使命」

“I Have SPS”

2023年1月18日(水)11時25分
リズ・ブロウズ(英ヨークシャー在住)
リズ・ブロウズ

自身が立ち上げた支援グループで患者同士の交流にも力を入れているブロウズ CHRIS BLOWS

<足が思うように動かないと感じたあの日から30年。セリーヌ・ディオンも患ったSPSと共に生きるということ>

セリーヌ・ディオンが難病のスティッフパーソン症候群(SPS)を患っていると公表したニュースを、私は自宅のオフィスで知った。もちろん驚いたが、ほかの人たちほどではなかっただろう。

私が初めて自分のSPSの症状に気が付いたのは1990年のこと。足が思うように動かず、道路を渡るのが怖くてたまらなかった。元看護師として、何かがおかしいと感じた。

何年も毎週のように通っていたかかりつけ医は、97年に私の左足のけいれんに気が付いた。31歳から糖尿病を患っていたので専門クリニックを訪ねたが、糖尿病とは関係ない神経の症状だと言われた。

神経科医には、スティッフマン症候群(当時の呼び名)のようでもあるが大丈夫だろう、非常にまれな症例で、自分は一度も実際に見たことがないから、と言われた。

その年の8月か9月に1週間ほど入院し、さまざまな検査を受けて、多発性硬化症など可能性がある病気を除外していった。結局、SPSと診断された。

SPSは約100万人に1人が発症する自己免疫疾患だ。私もそうだったように、診断が難しい。筋肉が硬直したりけいれんしたりするため、彫像のように見えたり、酔っぱらっているように見えたりする。動作に支障が出て、外出も難しくなる。患者の大半はほかの自己免疫疾患もあり、不安や広場恐怖症(特定の場所で強い恐怖や不安を感じる病気)を訴える人もいる。

これからどうなるのかと神経科医に聞くと、さらにけいれんが続き、いずれ寝たきりになるだろうと言われた。夫と図書館に行って調べたら、どの資料にも鎮静薬のジアゼパムが最善の治療だとあったので、再び神経科医を訪ねて私も使ってみたいと申し出た。

その時点で、靴下や靴を履くときにかがむことができなくなっていた。97年10月からジアゼパムを飲み始め、その年のクリスマスには9人分の買い物をして、料理を作り、洗い物をした。

同じ病だから分かること

私の症状は時間とともに変化している。例えば、外出すると不安に襲われる。慣れない環境だからではなく、とにかく不安になるのだ。下りる動きもつらい。SPSの患者の中には、お尻をつきながら階段を下りる人もいる。

先日、美容院に行くときに道がうっすらと凍り付いていた。氷は滑りそうで怖い。道路を渡るときは今も不安だ。車椅子や電動カートに乗っているときはいいが、誰かに付き添ってもらわなければならないこともある。

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