ブラジル議会襲撃の陰で米極右スティーブ・バノンはいかに暗躍したか
Steve Bannon's connection to Brazil insurrection by Bolsonaro supporters
アメリカの右派の集会で演説するバノン(2022年12月20日,アリゾナ州フェニックス) Jim Urquhart-REUTERS
<トランプの元側近であるバノンは「ブラジルのトランプ」ボルソナロの大統領選敗北も「選挙不正が原因」だと繰り返し主張していた>
選挙に敗北した前大統領を支持する右翼の群集が選挙は不正と主張して、議会を襲撃する――1月8日にブラジルの首都ブラジリアで起きたこの事態は、2021年1月6日にアメリカで起きた連邦議会襲撃事件に酷似している。そして2年前と同様に今回も、ドナルド・トランプ前米大統領の元主席戦略官だった極右スティーブ・バノンが、この事件に絡んでいると指摘されている。
ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者たちは8日午後、議会や最高裁、大統領府を襲撃した。ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領の就任式から1週間というタイミングで起きたこの騒動のなか、国旗の緑と黄色を身にまとった何千人ものボルソナロ支持者が民主主義を象徴する建物を荒らして回り、ボルソナロの復権を要求した。
ボルソナロの政治手法は「ブラジルのトランプ」と呼ばれるほど似ていたThe riots in Brazil spotlight how deeply the Trump network is enmeshed in Bolsonaro's political world, via @PostKranish @IsaacStanBecker https://t.co/sPvD1CCK0J
— Dave Clarke (@davecclarke) January 10, 2023
ブラジルでは2022年10月に大統領選挙が実施され、ボルソナロが敗北。しかしボルソナロとその支持者たちは、不正投票により選挙結果が操作されたという主張を押し通して敗北を認めず、抗議を続けてきた。
こうしたなかバノンは、2020年の米大統領選でトランプが敗北した時にもそうしたように、ブラジル大統領選の正当性に対する疑念をブラジルの人々に唱え続けてきた。
議会襲撃のデモ隊は「自由の戦士」
バノンは2020年の米大統領選で右翼の陰謀論者たちが主張したのと同じように、ブラジルの電子投票システムは「ボルソナロから選挙を盗む」ためのものだと主張してきた。8日にボルソナロの支持者が政府建物を襲撃した後も、この主張を繰り返した。
彼はソーシャルメディア「Gettr(ゲッター)」のアカウントに繰り返し、「ルラは選挙を盗んだ。ブラジル国民はそのことを知っている」と投稿し、ボルソナロの支持者による政府建物の襲撃に関するリンクを共有。彼らを「自由の戦士」と称えた。「犯罪者で無神論者でマルクス主義者のルラが選挙を盗んだ。ブラジル国民はそれを知っている。ルラは、あらゆる共産主義の独裁者と同じように弾圧を行っている」と煽った。
バノンは2022年10月にボルソナロが選挙で敗北した直後にも、Gettrへの投稿の中で、ブラジルの選挙が「白昼堂々盗まれた」と主張していた。バノンはかねてから、ボルソナロと、ブラジル大統領選の結果を操作しようとする彼の試みとのつながりを指摘されてきた。
米ワシントン・ポスト紙は2022年11月、ボルソナロの大統領選敗北を受けて、彼の息子でブラジル下院議員のエドゥアルド・ボルソナロがバノンと話をしたと報じた。バノンはボルソナロ陣営に助言を行っていた。バノンは当時、アリゾナ州知事選の共和党候補カリ・レークの選挙運動を手伝っており、エドゥアルドがアリゾナ州まで出向いたとされている。ちなみに、トランプの忠実な支持者であるレークはこの知事選で民主党の候補に敗れており、彼女もまた自分が敗北した理由は選挙の不正だと主張している。