強大な近隣国に攻撃されるウクライナの現状を、「明日のわが身」と考えよ(ドイツ外相)
ウクライナ産の小麦が不足して世界的食糧危機に ALEXANDER ERMOCHENKOーREUTERS
<侵略行為や弾圧、食料不足は世界全体の問題。弱い立場の人々の声を聞き、行動しなければならない>
新しい年に、どうしたら楽観的になれるか。将来を見据え、ぶれることなく、一致団結すれば目標を達成できると自信を持つ――そうした姿勢を指針にするべきだ。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の1カ月後、国連総会は民間人保護などを求める人道決議案を、世界各地域の計140カ国の賛成を得て採択した。各国を結び付けるのは、市民の期待に沿って行動するという共通の信念だ。だからこそ、不正義に対して中立の立場は取らないと、断固として表明した。
ロシア軍が占領した地域で性的暴行を受けた女性、射殺された交響楽団指揮者、自宅を追われた幼児――。彼らは未来の私たちかもしれない。ウクライナへの侵略行為を傍観すれば、強大な近隣国に攻撃される不安の中で誰もが生きることになる。
団結が私たちの力だ。そのためには、よりよい聴き手になるべきだ。欧州内の同盟国だけでなく、アフリカやアジア、中南米、中東のパートナー国にも耳を傾ける必要がある。
「欧州で戦争が起きているから、支持してほしいとあなたたちは言う。だが近年、私たちが紛争に苦しんでいたとき、あなたたちはどこにいたのか」。ウクライナ戦争をめぐっては、そんな声が多く上がった。
われわれ欧州の行動や国際社会に対する過去の取り組みについては、自省が必要だ。同時に、ロシアに対する軍事的・政治的・経済的依存を低下させることの難しさを訴える国々の声に耳を澄ますべきだ。
欧州で戦争が起きているからといって、私たちは国際社会に背を向けたりはしないと伝えたい。むしろ、この戦争は世界に苦しみを広げていると考えている。ロシアがウクライナの穀物輸出へのアクセスを阻害し、食料不足などの原因について嘘を拡散しているからだ。
食料危機のもう一つの根本原因
一方で、食料危機の最も深刻な根本原因の1つは気候非常事態だ。この問題に取り組むべく、私たちは力を結集していく。
気候危機の大部分を引き起こした先進工業国には、特別な責任がある。危機の緩和に取り組み、排出量を削減し、産業革命前と比べて世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力目標の実現可能性を維持しなければならない。気温上昇を0.1度抑えるごとに暴風雨や洪水、干ばつの深刻度が下がり、脅威は減少する。