最新記事

ウクライナ情勢

ドイツの最強戦車「レオパルト2」を大量供与しなければ、形勢は逆転する

Tanks, but No Tanks

2023年1月19日(木)18時30分
ジャック・デッチ

欧米諸国はこれまで、フランスの装輪装甲車AMX-10RCやアメリカ製のブラッドリー歩兵戦闘車などの軽装甲車をウクライナに提供してきたが、ウクライナはドイツの主力戦車レオパルト2の供与を望んでいる。

レオパルト2は世界最強クラスの戦車とされており、ヨーロッパの12を超える国が同戦車を導入。NATO加盟諸国の保有数は2300台にのぼると推定されている。燃料効率がガソリンより高いディーゼルエンジンを搭載しており、燃料不足に苦しむウクライナのニーズにより適していると考えられている。

しかしドイツはアメリカの当局者に対して、米国防総省が米軍の主力戦車エイブラムスを供与しない限り、ドイツもレオパルト2を供与するつもりはないと示唆している。だが近い将来、アメリカがエイブラムスを供与することはなさそうだ。

1月20日に開かれるウクライナ防衛支援会合では、レオパルト2が議論の焦点となる見通しだ。ドイツに対しては、ウクライナに直接戦車を供与するか、最低でも(フィンランドやポーランドなどの)第三国が保有するレオパルト2をウクライナに供与する許可を出すよう圧力が高まっている。

2回目の大規模動員も近い

英ガーディアン紙によると、20日の会議に先立ち、イギリスのウォレス国防相は19日にバルト三国とポーランドの国防相と会談を行う予定だ。ドイツのオラフ・ショルツ首相にウクライナへの戦車供与を認めるよう迫るための調整だという。

ウクライナ軍が今後どれだけ領土を奪還できるかは、どれだけの戦車の提供を受けられるかにかかっている。近くカナダのLAV(装甲兵員輸送車)やアメリカのストライカー装甲車がウクライナに到着する予定だが、それだけではウクライナの要求には程遠い。ウクライナ軍では、旧ソ連製戦車用の弾薬も尽きかけている。

ウクライナの情報機関は、ロシアが2回目の大規模な動員を行う見通しだと警告している。だがこうしたなか、ウクライナには自国軍の訓練を行う組織的な能力が不足しており、西側の当局者や軍事専門家は、何カ月も前線で戦ってきたウクライナ軍の兵士が今後、不足する可能性があるのではと懸念を募らせている。西側諸国がポーランドやラトビア、イギリスやアメリカでもウクライナ兵の訓練が行われているものの、これらの兵士はまだ戦場に配備できるレベルには育っていない。年齢が比較的若いウクライナ兵でも、これまでは敵対勢力に迫撃砲で対抗する旧ソ連式の戦術に基づく訓練を受けていたため、新たな戦術や防空システムに合わせるための基本を学ぶ必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾囲み実弾射撃伴う大規模演習演習 港湾な

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中