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テレワーク

テレワークの普及で女性の負担が増加したのはなぜか

2022年12月14日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
在宅で働くシングルマザー

コロナ禍で日本でもテレワークが一気に普及したが…… Drazen Zigic/iStock.

<テレワークによる生活変化を育児世代で見てみると、女性の負担は以前よりも増加している>

コロナ禍以降、人々の生活は大きく変わった。働き方について言うと、テレワークの普及が大きい。テレワークとは、「ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」(日本テレワーク協会)のことで、社員がオフィスに集って一定時間仕事をする従前の働き方とは異なる。

その多くは在宅勤務だが、通勤がないので時間的余裕が生まれ、その分を家事や育児等に充てることもできる。周知のように日本の男性の家事分担率は低いが、在宅勤務が広がっている今、家庭内の性役割分業の歪みはなくなっているのだろうか。

2021年の総務省『社会生活基本調査』から、各種の行動の平均時間(1日あたり)が分かる。働き盛りの35~44歳の雇用労働者を取り出し、調査日の平日にテレワークをしなかった者(非TW組)とした者(TW組)に分け、家事の平均時間を見ると、男性では前者が12分、後者が16分。女性は順に110分、115分。テレワークによる変化はあまりない。

だが育児時間は、男性の非TW組が9分、TW組が21分であるのに対し、女性では順に27分、76分。男性の増分12分に対し、女性は49分も増えている。これがどういうことかは、他の行動変化と併せて見ると分かる。<表1>は、7つの行動の平均時間を非TW組とTW組で比べたものだ。

data221214-chart01.png

TW組が非TW組より何分長いか(右端)を見ると、テレワークによる生活変化が分かる。注目はマークをつけた箇所で、1)睡眠や休養は男性では増えているが女性では減っている、2)男性では趣味・娯楽、女性では育児の増分が大きい、という2点を指摘できる。

簡単に言うと、女性の負荷が増えている、ということだ。タスクとしての性格が強い仕事、家事、育児の合算をとると、非TW組では男女同じくらいだが、TW組では女性が男性より42分も長い(赤字)。

テレワークによって、男女の生活時間格差が縮まるどころか開いてしまっている。既婚の男女に限れば、上記のような傾向はもっと顕著だろう。「在宅の夫の世話も加わってしんどい、大きな子どもが1人増えたようだ」という女性の嘆きがSNS上で散見されるのも頷ける。

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