「アメリカの傭兵」──ワグネルが名指しで命を付け狙う精鋭グループ
Notorious Wagner Group targeting volunteers in Ukraine, U.S. trainer says
新兵の訓練と食料の配給 THE MOZART GROUP
プリゴジンはモーツァルトを「民間軍事会社」だとしているが、ミルバーンは否定する。「私たちは兵器を持たずに人道支援の活動をしている。法律的にも人道支援団体だ」と言う。米内国歳入庁の認定を受けた慈善団体だと説明した。
「傭兵がうちのような安月給で働くものか。うちのボランティアが訓練するウクライナ兵たちがもらう給料よりずっと少ない」とミルバーンは言う。「ただし心の知能指数は傭兵より私たちの方がずっと高い。うちが雇うのは傭兵とは異なるタイプの人材だ。私たちは武装していないし、戦わない。民間軍事会社との共通点は何もない」
だがモーツァルト・グループの名前は、ワグネル(ワーグナー)に対抗する意味でつけられたものだ。ワグネルはシリアやリビア、中央アフリカで展開した作戦で「きわめて残虐」な組織という評判を確立し、ロシア外交政の手先となる影の傭兵部隊として使われてきた。だがウクライナ侵攻が始まって以降は、ロシアのより効果的な先鋭部隊として台頭し、恐れられている。
家族の前で焼き殺される
おそらくこの「モーツァルト」という名前も、プリゴジンやワグネルに狙われる一因になっているのだろうとミルバーンは言う。「だが私たちの名前より彼らのではなく、私たちが報告していることだと思う」
ウクライナ軍は、前線地帯に近づける非軍事要員を厳しく管理している。ジャーナリストも、取材できる場所や報道内容に厳しい制限がある。だがモーツァルトはより深い場所まで入ることを許される。
「前線で何が起きているか、定期的に写真や動画を(インターネットに)投稿しているのは私たちだけだ。そしてウクライナの前線で起きているのは、私がこれまでにメディアで目にしたことがないような、全面的な破壊行為だ」とミルバーンは言う。「先週、私たちはある男性の遺体の収容を依頼された。家族の目の前で、ワグネル・グループに焼き殺された男性だ。つくり話ではなく、実際にそういうことが起きている」
モーツァルトのボランティアはウクライナ軍の訓練を行ったり、ウクライナ東部の前線地帯から民間人を避難させたりする活動をしている。民間人の避難は、常に危険と隣り合わせの任務だ。
「複数の部隊が監視を行っている。数キロ先では銃撃戦が展開されていることもあるし、頭上にはドローンや軍用機がいる」とミルバーンは言う。「大きくて邪悪なネコがいつ飛びかかってくるかわからない迷路で、なんとか出口を探そうとしているネズミのようなものだ」
これまでのところ、モーツァルトの隊員たちは「爆弾の小さな破片」に少々当たった以外怪我はしていないとミルバーンは言う。「うちのボランティアで国際部隊に移り、バフムト周辺でひどい重傷を負った人もいる。だがわれわれは運がよかった。運以外に説明のしようがない。まさに危機一髪という状況をいくつも経験したのだから」