最新記事

ウクライナ戦争

「アメリカの傭兵」──ワグネルが名指しで命を付け狙う精鋭グループ

Notorious Wagner Group targeting volunteers in Ukraine, U.S. trainer says

2022年12月8日(木)18時30分
デービッド・ブレナン

morzartsupply.jpeg
新兵の訓練と食料の配給 THE MOZART GROUP

プリゴジンはモーツァルトを「民間軍事会社」だとしているが、ミルバーンは否定する。「私たちは兵器を持たずに人道支援の活動をしている。法律的にも人道支援団体だ」と言う。米内国歳入庁の認定を受けた慈善団体だと説明した。

「傭兵がうちのような安月給で働くものか。うちのボランティアが訓練するウクライナ兵たちがもらう給料よりずっと少ない」とミルバーンは言う。「ただし心の知能指数は傭兵より私たちの方がずっと高い。うちが雇うのは傭兵とは異なるタイプの人材だ。私たちは武装していないし、戦わない。民間軍事会社との共通点は何もない」

だがモーツァルト・グループの名前は、ワグネル(ワーグナー)に対抗する意味でつけられたものだ。ワグネルはシリアやリビア、中央アフリカで展開した作戦で「きわめて残虐」な組織という評判を確立し、ロシア外交政の手先となる影の傭兵部隊として使われてきた。だがウクライナ侵攻が始まって以降は、ロシアのより効果的な先鋭部隊として台頭し、恐れられている。

家族の前で焼き殺される

おそらくこの「モーツァルト」という名前も、プリゴジンやワグネルに狙われる一因になっているのだろうとミルバーンは言う。「だが私たちの名前より彼らのではなく、私たちが報告していることだと思う」

ウクライナ軍は、前線地帯に近づける非軍事要員を厳しく管理している。ジャーナリストも、取材できる場所や報道内容に厳しい制限がある。だがモーツァルトはより深い場所まで入ることを許される。

「前線で何が起きているか、定期的に写真や動画を(インターネットに)投稿しているのは私たちだけだ。そしてウクライナの前線で起きているのは、私がこれまでにメディアで目にしたことがないような、全面的な破壊行為だ」とミルバーンは言う。「先週、私たちはある男性の遺体の収容を依頼された。家族の目の前で、ワグネル・グループに焼き殺された男性だ。つくり話ではなく、実際にそういうことが起きている」

モーツァルトのボランティアはウクライナ軍の訓練を行ったり、ウクライナ東部の前線地帯から民間人を避難させたりする活動をしている。民間人の避難は、常に危険と隣り合わせの任務だ。

「複数の部隊が監視を行っている。数キロ先では銃撃戦が展開されていることもあるし、頭上にはドローンや軍用機がいる」とミルバーンは言う。「大きくて邪悪なネコがいつ飛びかかってくるかわからない迷路で、なんとか出口を探そうとしているネズミのようなものだ」

これまでのところ、モーツァルトの隊員たちは「爆弾の小さな破片」に少々当たった以外怪我はしていないとミルバーンは言う。「うちのボランティアで国際部隊に移り、バフムト周辺でひどい重傷を負った人もいる。だがわれわれは運がよかった。運以外に説明のしようがない。まさに危機一髪という状況をいくつも経験したのだから」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ2%なら利下げ可能も、生産性向上は過信すべ

ワールド

経団連、米エリオットとの非公開会合を延期 「諸事情

ワールド

ロシア、核保有国の衝突リスク警告 英仏がウクライナ

ビジネス

CB消費者信頼感指数、2月は91.2に上昇 雇用に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 7
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 8
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    ウクライナに強硬姿勢を取るのはハンガリーだけでは…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中