「宇宙で最も古い銀河!」ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が捉える 宇宙歴の2%時点で誕生

2022年12月21日(水)20時07分
青葉やまと

遠くにある銀河からの光ほど、地球に届くまでに長い距離を旅するため、赤方偏移の影響を大きく受ける。この性質を利用して距離を推定する。

また、星を構成する元素によって、スペクトルは異なるパターンを示す。今後のさらなる詳細な分析により、銀河を構成している物質が判明すると期待されている。

過去を覗き込むタイムマシン

遠方の宇宙を観測できるウェッブ望遠鏡は、まるでタイムマシンのような存在だ。134億年前にGLASS-z12が放った光がいま地球に届き、ビッグバンから間もないころに創造された銀河の姿を観測することが可能になっている。

理論上、宇宙の最初期に誕生した恒星は、水素とヘリウムだけから構成されていたと考えられている。このような初期型の星は「種族Ⅲ」と呼ばれているが、これまでの観測史上、実際の発見には至っていない。

だが、遠い宇宙を遡って覗き込むことができるウェッブ望遠鏡により、こうした種族Ⅲの星が実際に発見されるのではないかと期待が高まっている。研究論文を共著したイタリア国立天体物理学研究所(INAF)のアドリアーノ・フォンタナ主任研究員は、今回発見されたGLASS-z12の銀河に、種族Ⅲの星が含まれている可能性があると考えているようだ。

ウェッブ望遠鏡は打ち上げ前に期待されていたよりも鮮明な観測データを得ることが可能となっており、天文学者たちを喜ばせている。INAFローマ天文台のパオラ・サンティーニ研究員は、米CNNに対し、「天文学におけるまったくもって新たな章の幕開けです」と興奮を語る。まるで考古学的な発掘作業をしていて、失われた都市や未知のものを突如として発見したようなものです。ただただ衝撃的です」

2021年12月25日に打ち上げられたウェッブ望遠鏡は、打ち上げから1年未満で観測史上最古の銀河の発見に貢献した。今後も重要な発見が続きそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中