最新記事

宇宙

「宇宙で最も古い銀河!」ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が捉える 宇宙歴の2%時点で誕生

2022年12月21日(水)20時07分
青葉やまと

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙誕生から3億5000万年の時点で形成された非常に古い銀河を捉えた...... dima_zel-iStock

<今夏から本格稼働しているジェイムズ・ウェッブ望遠鏡は、これまで観測が難しかった遠い宇宙の姿を鮮明に写し出している>

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙誕生から3億5000万年の時点で形成された非常に古い銀河を捉えた。宇宙が現在の年齢のまだ2%であった非常に早い時期に形成されていたことになる。

これまで観測された最も古い銀河は、ビッグバンから4億年後に誕生し、ハッブル望遠鏡が2016年に観測したGN-z11だった。今回発見された銀河はこれよりも古く、観測史上最古となる。GLASS-z12と命名された。

このような非常に古い銀河が存在する可能性は、ウェッブ望遠鏡が以前に観測したデータから推定されていた。今回、ジェームズ・ウェッブ望遠・先端深銀河系外調査(JADES)の国際チームが分光観測を実施し、宇宙誕生から3億5000万年時点という正確な年代を特定した。また、4億年未満時点で誕生した非常に古い銀河が、GLASS-z12を含めて同時に4つ発見されている。

本件に関し、国際チームによる論文が11月にプレプリント・サーバーのarXiv上で公開され、12月に入ってから科学系各ニュースサイトで報じられている。

遠い宇宙のごく暗い光を捉えた

このたび発見されたGLASS-z12は宇宙のはるか遠方にあり、現在観測されている光は134億年以上前に放たれたものだ。現在宇宙は138億年と考えられており、この光は宇宙史のほぼ全期間をかけて地球に届いたことになる。

遠方の宇宙は非常に暗く、ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡の観測能力が威力を発揮している。科学ニュースサイトのサイテック・デイリーは、遠方の銀河を観測する能力においてほかの宇宙望遠鏡の5〜10倍優れていると指摘している。今夏稼働を開始したウェッブ望遠鏡だが、本格稼働からわずか5ヶ月で観測史上最古の銀河の発見という成果を挙げた。

JADESの国際チームは、ウェッブ望遠鏡が搭載する近赤外線カメラ(NIRCam)を用い、10日間を費やして9つの波長帯の赤外線で観測を行った。これまでハッブル宇宙望遠鏡が重点的に観測してきたエリアを中心としているが、ハッブルよりも15倍広い宇宙の領域をカバーしており、さらに解像度もより鮮明となっている。こうして得られた赤外線データにより、10万個近い銀河の「地図」が得られた。

近赤外線の分光で距離と構成元素がわかる

チームはさらに、ウェッブ望遠鏡の近赤外線分光器(NIRSpec)による解析を加えた。NIRSpecは髪の毛ほどの細さのシャッターを25万個備えており、最大で200個の天体のスペクトルを一度に観測することができる。

こうして個々の銀河の赤外線スペクトルを解析すると、対象の銀河がどれほど遠くにあるかを正確に特定することができる。原理として、宇宙は膨張を続けており、銀河が放った光は地球に届くまでに引き延ばされる。波長が長くなることで赤寄りの光に変化する「赤方偏移」と呼ばれる現象だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中