「病院に行かせてくれない」「祈れば治ると言われる」──宗教2世が体験した医療ネグレクトの数々
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<荻上チキ氏が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」が宗教2世1131名を対象に行った実態調査には、教義のために医療行為を受けられなかったり、怪我や病気を信仰不足のせいにされるといった体験談が数多く寄せられた>
国会では今、宗教的献金についての「被害者救済法」が、詰めの作業に入っている。「寄付の勧誘に際して困惑させる行為」の中には、勧誘時に恐怖心を植え付けたことまで遡れるという政府解釈が示された点は重要だ。他方で、不当な寄付の防止に対し、「禁止規定」にしたい野党案と、「配慮義務」にとどめたい与党案とには、溝も感じられた。
救済法自体は、やや突貫工事的な側面がある。他の法案についてもそうだが、永田町では暗に、「今年作った法律は、来年すぐさま改正することはできない」といった前提が共有されてしまっている。だが、このような前提は忘れ、法案作成から間もなくであっても、問題が指摘されている点についてはすぐさま、次期国会でも「改正論議」を行うような動きがあってもいいと思う。
また、救済法はあくまで、寄付行為の一部について議論されているものだ。宗教的虐待や不当勧誘、退会の阻止など、より広い論点がそのまま残っており、それもまた次期国会での大きな宿題である。
正当化される医療ネグレクト
さて、宗教2世に限らず、医療カルトを含めた2世が経験する虐待行為の一つに、医療ネグレクトがある。エホバの証人の「輸血拒否」は有名だが、医療ネグレクトはエホバのケースに限らない。
筆者が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」では、宗教2世の実態調査を行っており、1131人の有効回答を得た。その調査には、総計50万字ほどの自由記述が寄せられたが、目を通していると、医療に関わる記述が多くあることに気付かされる。
まず目立ったのは、医療行為を受けさせてもらえないという、ネグレクト(対処放棄)の事例だ。いくつかの具体例を紹介したい。
(※具体的な記述が含まれるので、ストレスやフラッシュバックなどに注意してください。なお、コメントは原文のまま掲載しています)
●教団の本部に連れて行かれ、信者と交流させられた。手かざしによる健康改善を教義としている宗教だった。
●医療ネグレクトに遭っていた。酷いアトピー性皮膚炎には、薬を塗ってもらえず、信仰で販売している水(ただの水道水を高値で販売しているもの)を塗られた。風邪を引いても病院に連れて行ってもらえなかった。
●アトピー性皮膚炎を患っていたが、適切な治療を受ける機会を得られなかった。連れていかれたのも数回民間療法(漢方)のみしか記憶をしていない。
●全身に広がるアトピー性皮膚炎を手かざしで治すと言われたがまったく治らず、苦しい思いをした。薬が欲しいと言うと、薬がいかに悪いかを母から説教された。ただ、母は宗教以外にも多種多様なスピリチュアルに傾倒しており、原因がどこにあるのかは判然としない。
●辛かったこととして「医療の制限」があった。病気になっても病院に連れていってもらえなくて辛かった。民間療法も、痛くて辛いものが多かった。