最新記事

中国情勢

中国全土で反政府デモ、習近平に退陣を求める異例の事態

Videos Show CCP Forces Violently Crackdown on China Protests Against Xi

2022年11月28日(月)16時36分
アンドリュー・スタントン

ついに名指しで非難されることになった習近平と共産党は人々に銃を向けるのか?(11月19日、バンコク) Jack Taylor/REUTERS

<抗議に集まった人々が「習近平、退陣!」と叫ぶ異常事態を伝える動画がツイッターにあふれている。これまで通りなら、ここで捕まったり目を付けられた人々は中国で酷い目に遭うことになる、と人権団体は震え上がるが?>

独裁色を強める中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がこだわる厳しいゼロコロナ政策に抗議するデモが中国各地で起きるなか、ソーシャルメディアに投稿された動画からは当局が暴力的な弾圧を行っていることが見て取れる。

大規模なデモが続発するきっかけとなったのは、新疆ウイグル自治区ウルムチ市の高層住宅で火災が発生し、10人が死亡したこと。救助のようすを撮影した動画が中国のソーシャルメディアに投稿され、ゼロコロナ政策による封鎖が救助を遅らせ、死者を増やす結果になったと考える人が抗議を始めたのだ。

当局は、上層階の住民も下りてきて避難することは可能だったと弁解しているが、ゼロコロナ政策のせいで住民が逃げ遅れたと考えている国民の怒りをなだめる効果はほとんどなかった。

上海などではデモ隊が習の退陣を呼びかけるという異例の事態になっている。ちなみに習は国家主席として過去に例のない3期目に突入したばかりだ。

【動画】「裏切り者の習近平は退陣せよ!」という異例の抗議

中国は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにゼロコロナ政策を継続している。武漢で新型コロナウイルスの最初の感染例が見つかってから3年近くが経つが、中国共産党はゼロコロナ政策が世界的な景気減速やウイルスによる多数の死者を防いだと主張している。

「抗議する人々の末路を思うと見るのもつらい」

だが当局による弾圧にもかかわらず広がっている抗議活動からは、国民の不満の大きさがうかがえる。27日にソーシャルメディアに投稿された複数の動画には、時に暴力的なやり方で当局が抗議活動を抑え込もうとしている様子が捉えられている。

「上海における平和的な反中国共産党政権デモの2日目」と投稿したのは、中国の現状を頻繁にツイートしているアカウントだ。「共産党はデモ隊に対し暴力的な取り締まりを始めた」

米公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のロブ・シュミッツ記者は、警察がデモ隊を上海の街路から排除するようすを撮影した動画をツイッターに投稿した。

【動画】抗議デモを暴力で鎮圧しようとする当局

「習近平と中国共産党に抗議する人々へに中国政府がこれからどんな対応を見せるのか見ものだ」と、彼は書いた。

中国で人々が政治的な抗議をはっきりと示すのは異例だ。「表現の自由は保障されている」との政府の公式見解にもかかわらず、人権問題の専門家たちはずっと以前から、政府に対する国民の批判を共産党が無理やり抑え込んでいることへの懸念を表明していた。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチで調査を担当する王亜秋(ワン・ヤーチウ)は26日、ツイッターに「声を上げている人々の末路が分かっているだけに、(抗議活動を)見るのはつらい」と投稿した。

【動画】彼らの運命を思うと胸が痛む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中