最新記事

ドイツ

ドイツ車の約4割は中国製──やめられないドイツの中国依存

Scholz’s Business Trip

2022年11月8日(火)14時53分
ハンス・マウル(ドイツ外交政策研究所代表)

生産台数の4割が中国製

安価なロシア産天然ガスは、何十年にもわたりドイツのあらゆる産業の好業績を支えてきた。その供給ストップで生まれた、「相互依存の兵器化」や「戦略的脆弱性」や「サプライチェーンの回復力」に対する大きな懸念は、ロシアだけでなく、中国にも向けられるようになった。

このことは、ドイツ政府の対中姿勢の見直しに拍車をかけたようだ。中国への依存度低下は、政府だけでなく、ドイツの産業界全体の新しい合言葉になったかに見えた。

ところが中国への依存度がいかにディープかが明らかになるにつれて、これは「言うは易く行うは難し」であることが分かってきた。

なにしろドイツの自動車産業は、全生産台数の約4割を中国で生産している。フォルクスワーゲン(VW)の場合は5割近い。中国市場なしでは、フォルクスワーゲンはおそらく自動車メーカーとして独立を維持できないだろう。

世界最大の総合化学グループBASFは最近、中国南部に100億ユーロを投じて巨大な生産拠点を新設した。今後の収益の伸びの3分の2は、中国市場からもたらされると見込んでのことだ。

中国市場に依存しているのは大手の多国籍企業だけではない。ドイツの代表的企業のサンプル調査では、貿易企業の40%、製造業のほぼ半数が、重要な原材料や中間材の供給を中国に依存していることが分かった。自動車産業の場合、その割合は75%にも達する。

これほどの依存レベルを下げるには、かなりの時間がかかる。そのためか、代替的な供給源や市場の開拓に励む企業がある一方で、産業界全体のトレンドは「中国にとどまろう」のように見える。

事実、メルカトル中国研究所の最近の調査では、ドイツの自動車産業は、中国のパートナー企業への出資を増やすなど、むしろ中国におけるプレゼンスを深めている。研究開発拠点を中国に移すメーカーもある。このため、ショルツ政権が伝統的なビジネス寄りの対中政策を変えようとしていることについて、産業界からは大きな反発があった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、NYマンハッタンの「渋滞税」承認 1月5日から

ワールド

トランプ氏、農務長官にロフラー氏起用の見通し 陣営

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可

ワールド

司法長官指名辞退の米ゲーツ元議員、来年の議会復帰な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中