最新記事

ドイツ

ドイツ車の約4割は中国製──やめられないドイツの中国依存

Scholz’s Business Trip

2022年11月8日(火)14時53分
ハンス・マウル(ドイツ外交政策研究所代表)
ショルツ独首相

11月4日、北京で中国の習近平国家主席(右)との会談に臨むショルツ独首相。習が異例の3期目の共産党総書記就任を果たしてから中国を訪問した初の主要国首脳となった KAY NIETFELDーPOOLーREUTERS

<ハンブルクを「ヨーロッパにおける中国の母港」と発言したことがある、ショルツ独首相の訪中が示すものとは? 連立政権での約束「対中強硬方針」を転換せざるを得ない、ドイツの苦しい事情>

すったもんだの攻防の末、オーラフ・ショルツ首相率いるドイツ連立政権が誕生したのは2021年12月のこと。このとき社会民主党(SPD)と緑の党、そして自由民主党(FDP)が結んだ連立協定には、中国に対して厳しい姿勢を取るという新たな方針が定められていた。

それまでのドイツの対中政策は、経済関係を深く、広く構築するというものだった。それ以外の全て、つまり中国国内の人権侵害や、反体制的意見の抑圧や、東アジア地域における強硬姿勢などは、表面的に批判する程度だった。それを変えようというのだ。

連立協定は、中国との協力を引き続き促進するが、あくまで「可能な場合」に限られ、「人権法と国際法に基づく」こと、と制限を設けた。

また、EUと中国が20年末に大筋合意した包括投資協定(退任間近のアンゲラ・メルケル前独首相が、アメリカの警告を押し切ってまとめたものだ)は、「多くの理由により」批准作業が凍結されていることを指摘。欧州企業が中国市場で相応の待遇を受ける必要性を指摘している。

連立協定は、ドイツが中国経済への戦略的依存度を低下させることにも言及している。また、南シナ海の島しょ部などの領有権問題は国際法に基づき解決されるべきで、台湾問題は中国と台湾双方の合意により、平和的手段でのみ解決されるべきだとしている。

ドイツは法治主義の伝統が強く、連立協定は神聖に近い重要性を持つ。たいてい膨大な文書(今回は178ページ)になり、やたら詳細まで詰めた領域もあれば、連立政党間の立場の違いを埋めるために、漠然とした一般論に終始する領域もあることが多い。

だが、なにより重要なのは、その協定が、これから発足する連立政権のあらゆる政策決定の中核を成すことだ。連邦議会でどのような法案を採択させるかの青写真にもなる。

実際、ショルツ政権の発足当初は、連立与党はいずれも、対中政策を全面的に見直す方向を示唆していた。

ところがそこに、ロシアのウクライナ侵攻が起きた。それによる経済制裁と、報復としてのロシアのガス供給削減と最終的な停止は、ドイツにロシア産エネルギーへの過剰依存を痛感させ、それを放置してきたことへの反省をもたらした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中