最新記事

宗教

「脱会届けを受理してくれない」──宗教2世が答えた、ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

2022年11月23日(水)12時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)
勧誘

(写真はイメージです) caracterdesign-iStock

<荻上チキ氏が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」が宗教2世1131名を対象に実態調査を実施した。脱会者からは、教団によるしつこい再勧誘の実態や、「脱会の手続き自体が不明」という声が数多く寄せられている>

連日、「宗教2世」の問題が国会で取り上げられている。この問題については、野党が先んじて救済法案などを提出する一方で、与党の消極性が目立ってしまっている。

創価学会を支持母体とする公明党はもちろんのこと、自民党もまた、複数の宗教団体から支援を受けている。与党各議員におかれては、「我が身可愛さでブレーキを踏んでいるのではないか?」という市民の疑念を払拭するためにも、問題を起こす団体と一線を画した上で、「2世の権利擁護」のためのリーダーシップを発揮することを期待したい。

niseibookthumbnail_obi.jpgさて、筆者が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」では、宗教2世の実態調査を行なっており、1131人の有効回答を得た。本連載ではその調査から見えてきた、「あまり論点化されていない課題」を整理している。

今回、まず問題提起したいのは、「宗教的つきまとい」である。これは、入会を断っているにも関わらず、あるいは脱会の意図を表明しているにも関わらず、しつこく勧誘・再勧誘を繰り返されることを指している。

調査では、「現在では脱会している2世」に対して、脱会した後に経験したことについても尋ねている。その結果を分析してみると、脱会回答者の35%が、「教団や家族から何度も再入団を求められた」と答えていた。

また、脱会回答者の22%が、「家族から脅迫・非難・暴力を受けた」と回答、11%が「教団関係者から脅迫・非難・暴力を受けた」と回答していた。

chiki221123_chart_re2.jpg

「宗教2世」当事者の実態調査より 提供:社会調査支援機構チキラボ

宗教的つきまといの典型は、教団関係者からの度重なる訪問である。以下、調査に寄せられた具体例をいくつか紹介したい。
(※具体的な記述が含まれるので、ストレスやフラッシュバックなどに注意してください)


●脱会・転居後も、教団の人間からの連絡や訪問が続いて、病んでしまった。

●しつこく再勧誘に来る信者を追い払うのが面倒だった。

●教団には「牧羊訪問」というものがある。教えから距離を置いた「迷える子羊を正しく群れへ戻すため」の行為。ただただ迷惑。

●県外に逃げても住所を記録されるので、その地域の活動家が訪問してくる。

●引っ越し先に地域の女子部の信者が何度も訪ねてきたため(母親が連絡したものと思います)、ずっと居留守を使いました。1年ほどで訪問は止みました。

●私は今は未活動ですが、信者の人が家庭訪問に来て、「あなたはご両親の信心のお陰で今は恵まれた生活をしているが、このまま未活動のままでは福運が尽きてしまうよ」と言われた。

●アポ無しで自宅に訪問し、何かしらの行事への参加を、こちらが折れるまでとにかくあの手この手で誘い出そうとしてきた。

●いま全く活動はしていないが、私の住所などの個人情報が教団に伝達されていて、いまだに信者の人に電話されたり、直接家に訪問されるのがストレス。選挙が近くなると特に。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

マスク氏のニューラリンク、カナダでも脳チップ治験開

ワールド

中国政府の経済顧問、25年の成長率目標「5%前後」

ワールド

欧州インフレ見通し、米関税引き上げでも変わらず=仏

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中