最新記事

ウクライナ情勢

プーチンも困っている、コントロールの効かない国内強硬派──分岐点は動員令だった

Why Putin Is Escalating the Bombings

2022年10月26日(水)12時15分
ラビ・アグラワル(フォーリン・ポリシー誌編集長)

例えばブチャでは、既に住民が地域社会を立て直し、町の再建が進んでいた。道路はきれいになっていて、子供たちの歩く姿もあった。首都キーウでもそうだった。少なくとも(10月半ばに)空爆が再開される前の時点では、人々の暮らしは「平時」に戻っているように見えた。カフェも再開されていた。

ウクライナの人々は口をそろえて、プーチンが戦術核を使うリスクに自分たちがおじけづくことはないと言っていた。そして、自分たちの戦い方は変わらないとも言っていた。

核兵器を使っても戦争の結末は変わらない。ただ勝利の日までにウクライナ人が耐え、背負わなければいけない負担が増えるだけだと。

現地を見て、ウクライナ社会の回復力の強さを、そして最後まで戦い抜く国民の決意を実感できた。

――西側諸国はウクライナに武器を供与し、さまざまな形で援助しているが、ウクライナ側を完全に制御できるわけではない。いい例がクリミア大橋の爆破や、モスクワでの暗殺だ(過激なロシア民族主義者アレクサンドル・ドゥーギンの娘を爆殺した)。こうしたことで、西側の支援態勢が揺らぐ懸念はあるか

アメリカのバイデン政権とウクライナのゼレンスキー政権は今も、非常に緊密な協力関係を保っていると思う。常にコミュニケーションを取っていることは私たちも把握している。

例えばゼレンスキーが反転攻勢を計画していたとき、アメリカ政府はシミュレーションに密接に関わり、ウクライナ政府の意思決定を助けたはずだ。

おっしゃるとおり、私たちにはウクライナ側を制御できない。最前線で戦っているのはウクライナの人々だ。そういう関係には、ちょっとした緊張感が付き物だ。

だからこそゼレンスキーは折に触れて、緊張をほぐそうと試みている。例を挙げれば、ウクライナ側は、ロシア領内を攻撃できる長距離ミサイルや攻撃システムの供与を求めている。

しかしアメリカ側は、ウクライナを完全には制御できないため、武器供与で不必要に戦闘がエスカレートする事態を懸念している。

それでゼレンスキーは、こう言った。「よし、こちらが選んだ標的について、ホワイトハウスが拒否権を行使するのを認めよう」と。

これは両国の良好なパートナーシップを示す好例だが、もちろんアメリカとウクライナ両国の利害が分かれる場面も出てくるだろう。そうした場合に備えて、両国は問題をうまく処理する方法を常に模索している。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中