最新記事

ウクライナ

ゼレンスキーが市民を見捨ててキーウ脱出? ロシアが示す「証拠動画」の真偽を検証

Fact Check: Does Video Prove Zelensky Left Kyiv as Russia Claims?

2022年10月16日(日)13時15分
トム・ノートン
ゼレンスキー演説

米バイデン大統領と電話会談するゼレンスキー大統領(キーウ、2022年10月4日) Ukrainian Presidential Press Service/Handout via REUTERS

<キーウや国内各地から国民向けの動画を公開してきたゼレンスキー大統領だが、実は本人は安全な場所に避難済みだとロシア側は主張する>

10月10日、ウクライナ各地がロシア軍による大規模な攻撃を受け、少なくとも19人が死亡した。そうした状況のなかで、不穏な情報が駆け巡っている。それはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が首都キーウから逃亡したというもので、ロシア国営メディアがその「証拠動画」なるものを公開したのだ。

■【動画】「ウクライナ大統領が逃亡」の証拠とロシア側が主張するゼレンスキーの姿

ロシアによるウクライナへの攻撃が激化したのは、クリミア半島とロシア本土をつなぐ橋で起きた爆発を「ウクライナによるテロ攻撃」とするロシアが、報復に出たためとみられる。それでもウクライナは持ちこたえ、続く数日間は攻撃を撃退したと報じられている。

緊張状態が続いているとはいえ、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻している局面にあるなかで、この「怪情報」には違和感を覚える。そこで、ロシア側が公開した「証拠動画」が本物なのかを検証した。

ロシア国営メディアとロシア政府寄りのチャンネルが10月12日、SNS「テレグラム」に1本の動画を投稿した。そこには、ゼレンスキーがグリーンバック(緑色の背景スクリーン)の前に立ち、多数のカメラに囲まれてホログラム用の撮影をしている様子が映っている。

別の投稿には、次のような文章が書かれている。「これが、ウソを作り出す西側の産業だ。言い換えれば、ウクライナ人たちを、屠畜場へと送られる家畜に変えるやり方だ。ウクライナ人たちよ、この道化が演じる公開動画や主張をすべて覚えておきたまえ。そしてこのことを理解せよ。君たちは皆、すっかり騙されているのだ」

次のようなツイートもある。「ゼレンスキーの見事なスピーチは、こうやって作り上げられている。グリーンバックとハイテクな編集技術を多用しているのだ」

「ハリウッドが手を貸している。いかにも本物らしく見せかけるための技術はみな、ハリウッドのものだ。見事なプロパガンダ。私たちにはこれほどのことはできないだろう」

ゼレンスキー逃亡の噂は何度も飛び交ってきた

ゼレンスキーがウクライナから逃亡したという噂は、ロシアが侵攻した直後から繰り返し飛び交ってきた。以前には、ゼレンスキー自らが噂を否定する動画を公開したこともある。キーウの町なかで撮影した動画に、ほかの政府高官と並んで登場し、「私たちはここ(キーウ)にいる」と国民に訴えかけたのだ。

この動画は拡散し、リミックスも作られた。特に人気を集めたのが、米ヒップホップデュオのモブ・ディープが歌ってヒットした不気味な内容の楽曲「Shook Ones, Pt. II」をBGMにしたものだ。元の動画で見せたゼレンスキーのタフな態度と口調に、ユーモアを交えた賛意が表現されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中