最新記事

ウクライナ戦争

ドローン攻撃に対する報復でプーチンが恐れる米最強攻撃型無人機「MQ9リーパー」

Russia's Deadly 'Kamikaze' Drones Compared to Ukraine's Unmanned Arsenal

2022年10月19日(水)14時34分
ニック・レイノルズ

ロシアのドローン攻撃で破壊されたキーウのアパート。イラン製シャハド136を使ったとみられる。この破壊力が、さらに強いドローンの呼び水になる? Vladyslav Musiienko- REUTERS

<イラン製「シャハド136 」がウクライナにもたらした破壊で、これまで攻撃型ドローンの供与を控えてきた欧米は態度を変えるかもしれない。なかでもロシアが恐れるのは、かつて「アメリカの敵」の暗殺にも使われたと言われる「MQ9リーパー」だ>

10月17日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で複数回の爆発があった。24機を超えるロシア軍の自爆型「カミカゼ」ドローンによる攻撃だ。

使用されたドローンは、イラン製の「シャハド136」。ウクライナでの戦争で初めて導入された、翼幅およそ2.4メートルの三角形のドローンだ。9月半ばにウクライナで初めて確認された(それまでは主にイエメンでイランが支援する武装組織が使用していた)。シャハド136は、レーダーによる検知がきわめて難しく、空中を旋回して標的を認識すると、ミサイルのように突っ込んでいく。

ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻にシャハド136を導入したのは、ミサイルなど他の兵器が不足を補うためともみられる。だが17日の攻撃が証明したように、シャハド136はきわめて破壊力が大きな兵器であり、これでウクライナでの空中戦に新たな要素が加わることになった。ロシアはこれまでも、ウクライナのより小規模な標的に対して小型版の自爆型ドローンを使用しており、ウクライナ側もロシア軍の戦車や軍需物資に対してドローンを使用した疑いがある。

レーダーでの検知が困難

だがシャハド136は、それらのドローンとは少し異なる。ロシア軍が過去に配備した攻撃ドローン「ZALA KYB」は、連続飛行時間が最大30分で、射程距離はおよそ40キロだった。これに対してシャハド136は航続距離が1930キロ以上に達し、射程距離も現在ウクライナ軍が使用している「スイッチブレード」を大幅に上回る。「スイッチブレード」は米国製の安価な自爆型ドローンで、バックパックに入れて持ち運ぶことができ、射程距離は最大で約88キロだ。

シャハド136には、メリットもあればデメリットもある。シャハド136は、ウクライナなどが配備している再利用可能なドローン(主にトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」)に比べて最大積載量が大幅に少ない一方で、無人機のなかで最高の攻撃力をもつと言われる米国製ドローン「MQ9リーパー」などと比べて製造コストが大幅に低く、機体のサイズもずっと小さい。小型だからレーダーでの検知が難しく、ロシアにとってはTB2のような兵器の破壊力に対抗する上で有利だ。

米コーネル大学のドローン専門家でブルッキングス研究所の非常勤上級研究員であるサラ・クレップスは本誌に対して、「(シャハド136は)使い捨てできるし、最終的には自爆するから、途中で撃墜されるかどうかをあまり心配する必要がない」と指摘する。「そこで問題になるのが脆弱性だ。ドローンは大きいほどレーダーに捉えられやすく攻撃されやすいが、小さければ追跡も撃墜も難しい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中