最新記事

台湾有事

中国の台湾侵攻は何ヵ月も前から秘密でなくなる──元CIA分析官

China Won't Have Element of Surprise in Taiwan Invasion—ex-CIA Analyst

2022年10月6日(木)11時29分
ジョン・フェン

中国建国70周年の軍事パレードで手を振る習近平(2019年10月1日、北京の天安門広場)Thomas Peter-REUTERS/

<中国の台湾侵攻はその規模の大きさゆえに国家的な準備が必要で、戦略的なサプライズをもたらすことはできない。アメリカや台湾が探す具体的な兆候の一部を挙げよう>

元CIAアナリストのジョン・カルバーは10月3日、中国が将来、台湾を侵攻するとしても、それは「戦略的なサプライズ」にはなりえない、と指摘した。台湾侵攻を開始するとなれば、それに先立って全国的な動員が行われるため、数カ月から1年前にそれとわかる可能性が高いと、彼は言う。

CIA に35年勤務し、2015年から18年まで同局の東アジア情報担当トップを務めていたカルバーによれば、アメリカの情報機関は、中国において、ウクライナ侵攻前のロシアのような、軍の全体的な増強に向かう気配は感じていない。それは中国政府が近代史上最大の水陸両用攻撃に必要な準備をまだ始めていないことのさらなる証拠だ。

カルバーはこの見解をカーネギー国際平和財団シンクタンクに寄稿した記事で発表し、近い将来、台湾海峡で紛争が起きる可能性についての臆測を鎮めようと努めている。

中国の台湾進攻の可能性は、米政府高官らが言い出したことだが、ジョー・バイデン大統領が9月に中国が侵攻すれば米軍が台湾を守るとテレビのインタビューで発言したことで、再び注目を集めた。

なかでもよく引き合いに出されるのは、2021年春まで米インド太平洋軍の司令官を務めたフィリップ・デービッドソンの昨年の米議会における証言だ。彼は2027年に中国が台湾を侵攻すると予測した。

準備の気配は隠せない

米軍のマーク・ミリー統合参謀本部議長も、2027年が人民解放軍創設100周年にあたることから、この予測を支持している。

もっともアブリル・ヘインズ国家情報長官ら専門家の一部は、中国が台湾に進出すると決めても、そのための準備を整えるには時間がかかる、という。

ヘインズは5月の上院委員会で、中国は2030年までに「欧米の介入をものともせずに、軍事力で台湾を奪える立場を確立しようと懸命に取り組んでいる」と述べた。

ロイド・オースティン米国防長官は2日、CNNで「差し迫った侵略」の兆候はないと語った。

現在、大西洋評議会のシンクタンク、グローバル・チャイナ・ハブの上級研究員を務めるカルバーもこう述べている。「中国が戦争を計画しているなら、戦いが近づいていることを示す確実な兆候があるはずだ」

「そうした兆候は見逃されるほどかすかなものではない」とカルバーは主張する。ミサイル製造の急増などのシグナルや、国内経済や軍部を外国の制裁から守ろうとする動きといった兆候が1年前から現れ、それを欧米や台湾の情報機関が発見する可能性は高い」

「その3~6 カ月後には、人民解放軍は通常訓練を中止し、ほぼすべての主要な装備の整備を行うだろう」とカルバーは述べた。「人民解放軍全体で、兵士の休暇が取り消され、軍人は任務に復帰し、駐屯地や艦船からの移動を禁じられる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中