氷点下でも凍らない水の謎、しくみ解明に前進......分子が「プレッツェルのような形」
この変化は、新しい形の「相転移」だと考えられている。相転移とは、同じ物質が環境によって姿を変えることだ。水の例では通常、気体と液体、液体と固体を行き来する変化を指す。しかし、30年ほど前にボストン大学の研究者たちが、おなじ液体の水同士のあいだでも分子の変化が起きる可能性を論じ、「液液相転移(liquid-liquid phase transition)」と呼ばれる新たなタイプの相転移として提唱してきた。
液液相転移は過冷却の状態で起こると予想されていたものの、過冷却を保ちながら実際に観察することが困難であることから、これまで検証が進んでこなかった。今回の研究はコンピューター上のシミュレーションを活用することで、未知の相転移が実際に発生し得ることを示した。
この分野の世界的権威であり、研究に直接携わっていない米プリンストン大学のパブロ・デベネデッティ教授(化学・生物工科)は、本研究が「最も重要な液体である水」のトポロジー的特性の基礎を明らかにしたと評価している。
また、研究チームはシミュレーションにあたり、分子の1000倍の大きさの集合体であるコロイドと呼ばれる集合のモデルを開発した。このモデル自体も、今後は水以外の液体の特性を解き明かすものとして期待されているようだ。
研究結果は8月、物理学の科学誌『ネイチャー・フィジックス』に掲載されている。