最新記事

ロシア

プーチン動員令、国内パニックだけじゃない深刻な影響

A Bad Hand for Putin

2022年9月26日(月)12時05分
エイミー・マッキノン、ジャック・デッチ、ロビー・グラマー(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)

「プーチンとしては核の使用を正当化する口実になる」と、カーネギー国際平和財団のアレクサンデル・バウノフ上級研究員は、20日にツイッターで懸念を示した。

実際、プーチンは演説で、ロシアの「領土的一体性」が脅かされれば核を使用する可能性があるとし、「これは虚勢ではない」と明言した。

欧米とウクライナの指導者らは、すぐにこの声明を厳しく非難するとともに、はったりにすぎないと切り捨てた。

イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、「これは危険で無謀な核のレトリックだ。(プーチンが)これまで何度もやってきたことで、目新しいものではない」「今のところ(ロシアの)核の状況に変化は見られない。われわれは極めて注意深く監視・警戒態勢を維持していく」と語った。

4地域で行われる住民投票についても、非難が相次いだ。「投票をしても何も変わらない。ロシアは躍起になっているだけだ」と、ウクライナのドミトロ・クレバ外相はニューヨークで記者団に語った。

ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も20日、「見せかけの住民投票」だと非難し、「自信のある国ならこんなことはしない。こんなのは強さを示す行為ではない」と断言した。

新たに動員されることになった兵士たちがいつウクライナに投入されるのか、そして、果たして彼らがどのくらい使い物になるのかはかなり不透明だ。

ロシア軍の予備役は200万人以上いるが、日常的に訓練を受けている者はほとんどいないとされる。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、徴兵制度で集められた新兵が戦場に送られることはないと述べたが、少なくとも過去には、若い徴集兵がウクライナに放り込まれていたことが分かっている。

「戦闘能力は非常に低い」

専門家によると、新兵を訓練するには数カ月かかるが、軍務経験者ならば訓練期間を短縮できる。

「(予備役は)志願兵と同じように、1~2カ月ほどの訓練でウクライナに送り込まれるだろう」と、戦争研究所(ワシントン)のメーソン・クラーク上級研究員は語る。

「とはいえ、ロシアが現在のような窮地に陥ったのはそのせいだ。(予備役の)戦闘能力も非常に低いだろう」

21日のテレビ演説でプーチンは、招集した予備役には戦地に派遣する前に各自の経験に応じて「追加的な訓練」を行うと述べた。

しかし30万人の兵士を訓練し、武器を与え、配備するのは、既に窮地に陥っている軍隊に兵站(へいたん)上の重い負担を与えることになると、専門家は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル平和賞マチャド氏、授賞式間に合わず 「自由

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中