ウクライナ、新学期からの学校再開 ロシアの攻撃に備えシェルター建設など難題も
ウクライナはインターネットの接続環境が抜群だが、クーシュ氏によると、特に前線地域の教育当局はもっと多くのノートパソコンや各種端末が欲しいと訴えている。
さらに対面授業が再開されたとしても、生徒は環境に順応するための追加的な支援が必要になるし、一部では分散登校を迫られるかもしれない。
イルピンの学校の責任者はロイターに、校内にある防空シェルターの収容可能人数は300人と、全校生徒2000人の一部だけだと明かした。
西部にあるリビウ国立大学のメリニク学長は、戦争によって生じた学習期間の空白は「ウクライナにとって悲劇だ」と嘆きつつ、大学側は教員がオンライン授業をより円滑に進めるのを支援するプログラムを設け、何千人もの学生は自発的に避難民の手助けに従事していると述べた。
ウクライナ元財務相のナタリー・ジャレスコ氏は、教育を復活させれば、戦争後欧州各地に逃げ出した何百万人もの女性や子どもたちの帰国を後押ししてくれると主張。「彼らは将来の労働力であり、実質的に国家の未来そのものだ」と語った。
戦争がもたらしたトラウマ
子どもたちが受けた心的外傷(トラウマ)への対応も、大きな課題になる。
臨床心理士のオレーナ・ロマノワさんは、リビウに滞在する子どもを含めた避難民たちに寄り添い、色とりどりの動物のぬいぐるみを使って子どもたちの死や破壊の記憶を癒そうとしている。
ロマノワさんは「何はともあれ時間は過ぎていく。われわれは笑わなければならない。(彼らの)多くの記憶はこのおぞましい戦争に関するものだろうが、われわれは彼らの人生をより明るくしようと努力している」と説明した。
ウクライナのNGOのBASE UAは美術館などのアートを利用し、避難している子どもたちが持つ戦争の記憶を薄めようとしている。
ロシアが制圧したヘルソン州オレシュキーから逃げてきたある14歳の少女は、BASE UAが企画したカルパチア山脈でのサマーキャンプのおかげで、戦争の現実からほっと一息つけたと喜んだ。だが、やはり故郷の恋しさは募る。「クラスメートとのやり取りがほとんどなくなってしまったと感じている。地元に帰って学校で彼らと会いたいし、何もかもが普通に戻ってほしい」と訴えた。
(Andrea Shalal記者、Ivan Lyubysh-Kirdey記者)