最新記事

ドバイ

「最先端か? ただの空想か?」 ドバイのブルジュ・ハリファ囲む円環都市構想

2022年9月2日(金)18時31分
青葉やまと

世界一の高層建築、ドバイのブルジュ・ハリファを囲む建築のコンセプト...... ZNera Space

<高層建築の課題を解決すべく、水平に展開する野心的なコンセプトが飛び出した>

世界一の高層建築であるドバイのブルジュ・ハリファ。その周囲を美しい円環の建造物で囲む、大胆なコンセプト案が出現した。もし実現すれば、大胆なデザインの高層建築でビジネスと観光客を惹きつけるドバイに、さらなる個性をもたらしそうだ。

コンセプトは8月、ドバイの建築事務所であるゼネラ・スペースが発表した。「ダウンタウン・サークル」と名付けられた環のなかに、都市や人工的な自然環境を構築する案だ。オフィスや商業施設などが入居し、住宅や公共施設なども整備される。環は全長3キロに及ぶ大規模なもので、内部を5層に区切って開発する。

この環を垂直な柱で支持し、ドバイ中心部の多くの高層ビルを上回る高さ550メートルに浮かべる計画だ。ブルジュ・ハリファの高さが829.8メートルなので、ちょうどその3分の2ほどの位置に相当する。おなじ環状の建造物との比較では、外周約1.5キロのペンタゴン(米国防総省本庁舎)や米アップル本社の倍の規模となっている。それを空中で保持するという大胆な構想だ。

孤立する高層タワーへの課題意識

ゼネラ・スペースによると、斬新な形態のダウンタウン・サークルには、乱立する既存の高層建築の問題を解消したいという意図が込められているという。世界各地の大都市では高層ビルが次々と建てられているが、これらはそれぞれ独立した建造物となっており、その大部分は閉ざされた空間だ。住民やオフィス勤務者たちは建物内で多くの時間を過ごし、都市環境や自然から切り離された生活を送っている。

ダウンタウン・サークルはこうした問題点を解消するひとつのアイデアとして、一体となった巨大な都市を上空に展開するコンセプトを打ち出した。5層のうち1層は、スカイパークと呼ばれる広大な庭園になっている。人工的な森林のなかを遊歩道がめぐり、人々は歩いてほかのエリアへと移動できる設計だ。

パークでは自然光を浴びることができ、外壁越しにドバイの街並みを見下ろすこともできるという。コンクリートと砂嵐にまみれたドバイにあって、植物と新鮮な酸素に触れられる貴重な安らぎの場所となりそうだ。

最下層にはモノレール型の移動ポッドが吊り下げられ、環に沿って最高時速100キロで運行する。徒歩で行くには遠すぎる他地区へのスムーズな移動手段となるという。層として広がるスカイパークとあわせて、ダウンタウン・サークルでは水平方向への移動が容易となっている。垂直方向に展開し孤立してきた従来の高層ビルとは違った特性を実現するよう意図されているようだ。

実際に建築するのであれば、日本の感覚では既存の建物の日照権が問題となりそうだ。灼熱のドバイでは、市街地の日差しを遮るダウンタウン・サークルはむしろ好都合となるのだろうか。

スカイライン一新の案にさまざまな反応

本案はコンセプトであり、現時点で具体的な建設計画は未定となっている。イメージを発表したゼネラ・スペースは、人々の議論を喚起することが目的だと表明している。

反応はさまざまだ。あまりに非現実的との声がある一方、壮大な建造物を疑似体験できるコンセプト案として価値があるなど、さまざまな声が飛び交っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

JERA、米シェールガス資産買収交渉中 17億ドル

ワールド

ロシアとベラルーシ、戦術核の発射予行演習=ルカシェ

ビジネス

株式6・債券2・金2が最適資産運用戦略=モルガンS

ワールド

米FOMC開始、ミラン・クック両理事も出席
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが.…
  • 8
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 9
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中