最新記事

ウクライナ情勢

本人も困惑している「プーチンの負け戦」──主導権はウクライナ側へ

Putin’s Botched War

2022年8月30日(火)16時13分
ウィリアム・アーキン(元米陸軍情報分析官)

220906p50_PTN_04.jpg

ウクライナ北東部ハルキウ近郊で砲撃するウクライナ兵(7月28日) VYACHESLAV MADIYEVSKYYーUKRINFORMーFUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

ウクライナ兵100万のうち、4分の3に当たる75万人は2400キロ以上に及ぶ前線と後方地域、国内各地の基地に分散している。

一方、第2次大戦ではナチス・ドイツとソ連・欧州連合軍が前線に1500万の兵力を集結させていた。「戦術」核兵器という概念が生まれたのは、これほどの兵士が戦場に集まっていた時代だ。

核兵器を擁護する人々の考えが間違っているのは、昔の戦場の状況を現代に当てはめている点にある。

ロシア軍がウクライナに送り込んだのはせいぜい11万人。ウクライナ侵攻を「戦後最大の戦争」などと不吉な言葉で表現するから、それなら核兵器を使う意味もあるという誤解が生じる。もちろん、プーチンがそんな妄想を抱いている可能性は否定できないが。

ロシア軍撤退の可能性はどうか。旧ソ連は1989年に、約10年に及ぶアフガニスタン戦争から撤退している。その前例に倣うことは可能だ。

今回の戦争では、ロシア軍は一貫して前進を続けているとされ、ウクライナは辛うじて持ちこたえているだけとみられてきた。

しかし、こうした見方はウクライナ側にとってプラスに働いた。手遅れになる前に武器と支援を送ってほしいという西側諸国への訴えに、切実さが増したからだ。

ロシア軍がキーウ周辺から撤退し、ドンバス地方での攻撃を再開して4カ月近くになるが、ウクライナに対して決定的な打撃を与えられずにいる。

セベロドネツクとリシチャンスクを占領したが、多大な人的犠牲を払った。ルハンスク(ルガンスク)州の大部分を掌握したが、その後は再び膠着状態に陥っている。地上部隊は徐々に前進しているが、ペースは遅く、戦死者があまりに多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中