インフレ加速で高まる社会不安 憂慮すべき5カ国まとめ
4.チュニジア
ここ数カ月、多くのチュニジア国民がカイス・サイード大統領を批判するデモに参加している。同大統領は1年前に議会を停止して大統領令による統治を行っており、反政権派はこれをクーデターだと非難している。
北アフリカの小国であるチュニジアは、経済・財政上の危機に陥っており、ウクライナでの戦争により悪化した貧困と生活苦が広がる中、政府は救済措置を求めてIMFとの協議に入っている。
ベリスク・メープルクロフトのアナリストは、チュニジアは世界的な生活コストの高騰により最も深刻な打撃を受ける国の1つになりつつあり、市民による大規模暴動の可能性があるとの見方を示している。
他の多くの中東諸国と同様、チュニジアはロシアとウクライナからの穀物輸入に大きく依存しており、インフレ率は記録的水準となる8.1%に達している。
インフレにより抗議行動は活発になっており、その1つが6月に行われた国内最大の労働組合による全国規模のストライキだ。これは、IMFから40億ドルの融資を確保するための合意の一環として、賃金凍結と補助金削減を行うという政府の計画に反対するものだった。
5.ケニア
8月9日に大統領選挙・総選挙を控えるケニアでは、生活コストの危機的な高騰が緊張を高めている。小麦粉、食用油、ガソリンといった日用品の価格急騰により、インフレは過去5年で最高の8%近くに達している。
また東アフリカに位置するケニアは、過去40年以上で最悪の干ばつに見舞われており、飢餓が広がるとともに、コストのかさむ輸入食料への依存がさらに高まっている。
7月初めには、首都ナイロビで数百人が食料価格の際限のない上昇に抗議してデモ行進し、大統領選挙と総選挙のボイコットを呼びかけた。
ケニアの選挙では自分の民族によって投票先を決める人が多く、往々にして激しい対立と分断が生じる。民族コミュニティー間の暴力による選挙の混乱が見られることもある。
2007年の選挙では、衝突により1300人が死亡したと推定されている。国内には、今回の選挙結果を巡って対立が生じれば深刻な事態になるとの懸念もある。
(Nita Bhalla記者、翻訳:エァクレーレン)