最新記事

世界経済

インフレ加速で高まる社会不安 憂慮すべき5カ国まとめ

2022年7月30日(土)11時42分

4.チュニジア

ここ数カ月、多くのチュニジア国民がカイス・サイード大統領を批判するデモに参加している。同大統領は1年前に議会を停止して大統領令による統治を行っており、反政権派はこれをクーデターだと非難している。

北アフリカの小国であるチュニジアは、経済・財政上の危機に陥っており、ウクライナでの戦争により悪化した貧困と生活苦が広がる中、政府は救済措置を求めてIMFとの協議に入っている。

ベリスク・メープルクロフトのアナリストは、チュニジアは世界的な生活コストの高騰により最も深刻な打撃を受ける国の1つになりつつあり、市民による大規模暴動の可能性があるとの見方を示している。

他の多くの中東諸国と同様、チュニジアはロシアとウクライナからの穀物輸入に大きく依存しており、インフレ率は記録的水準となる8.1%に達している。

インフレにより抗議行動は活発になっており、その1つが6月に行われた国内最大の労働組合による全国規模のストライキだ。これは、IMFから40億ドルの融資を確保するための合意の一環として、賃金凍結と補助金削減を行うという政府の計画に反対するものだった。

5.ケニア

8月9日に大統領選挙・総選挙を控えるケニアでは、生活コストの危機的な高騰が緊張を高めている。小麦粉、食用油、ガソリンといった日用品の価格急騰により、インフレは過去5年で最高の8%近くに達している。

また東アフリカに位置するケニアは、過去40年以上で最悪の干ばつに見舞われており、飢餓が広がるとともに、コストのかさむ輸入食料への依存がさらに高まっている。

7月初めには、首都ナイロビで数百人が食料価格の際限のない上昇に抗議してデモ行進し、大統領選挙と総選挙のボイコットを呼びかけた。

ケニアの選挙では自分の民族によって投票先を決める人が多く、往々にして激しい対立と分断が生じる。民族コミュニティー間の暴力による選挙の混乱が見られることもある。

2007年の選挙では、衝突により1300人が死亡したと推定されている。国内には、今回の選挙結果を巡って対立が生じれば深刻な事態になるとの懸念もある。

(Nita Bhalla記者、翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中