2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国
CAN CHINA OVERTAKE THE U.S. ECONOMICALLY?
これからの10年で習が全てをうまくやり遂げて(それは無理そうだが)、中国が年5%以上の成長を達成して30年にアメリカの経済規模を上回ったとしても、人口動態の問題に足を引っ張られて、トップの座を維持することは難しいだろう。
国連の予測によると、中国の人口動態は30年代に厳しい状況に直面する。中国の人口の年齢中央値は、20年は38.4歳でアメリカ(38.3歳)とほぼ同じだ。しかし、30年には中国の中央値は42.6歳になり、05年の日本(43.0歳)とほぼ同じだが、30年のアメリカ(39.9歳)よりかなり高くなる。
35年に中国の中央値は45歳に達するのに対し、アメリカは40.9歳。中国の45歳は10年の日本(44.7歳)に近い。そして、40年に中国は46.3歳になる見込みで、15年の日本(46.4歳)とほぼ同じだが、40年のアメリカ(41.6歳)より4歳以上高くなる。
過去30年間の日本を考えると、人口動態は国の経済的な運命を決める。高齢化社会は、介護のための資源をより多く必要とする。貯蓄率は低下し、労働コストは上昇して、経済競争力が損なわれる。
30年の中国の人口動態が05年の日本と同じようになった場合、経済成長を維持する上で日本以上に困難な問題に直面する可能性がある。日本は高齢化社会に突入した後も豊かな先進国だった。05年の日本の1人当たり国民所得は3万7800ドル。
それに対し中国は、先述のとおり、今後10年間にわたり年平均5%の成長を維持できたとしても、31年の1人当たりの国民所得は1万9700ドルだ。最善のシナリオでも、中国が10年後に高齢化社会に突入する頃は、豊かさは05年の日本の半分程度でしかないだろう。
従って、仮に中国があらゆる困難を乗り越えて、10年後にアメリカを抜いて世界最大の経済大国になったとしても、社会の急速な高齢化によって経済成長は大幅に鈍化するだろう。そして、若年層が多いアメリカに世界経済第1位の座を再び明け渡すことになる。
とはいえ、油断は禁物だ。30年代初頭に30兆ドル近い経済規模で「世界第2位」の経済大国となった中国が、手ごわい超大国であることに変わりはない。
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