「イベリア半島が過去1000年で最も乾燥している」との研究結果
スペインのひび割れた貯水池(2021年) lvarobueno-iStock
<北大西洋に現れる亜熱帯高気圧の拡大によって、イベリア半島が過去1000年で最も乾燥していることが明らかとなった......>
北大西洋に現れる亜熱帯高気圧のアゾレス高気圧は、西ヨーロッパの天候や長期的な気候トレンドに大きな影響を及ぼす。このほど、アゾレス高気圧の拡大によって、イベリア半島が過去1000年で最も乾燥していることが明らかとなった。
北大西洋で時計回りに回転するアゾレス高気圧は、西ヨーロッパの降雨を調整する役割を担っている。夏には、地表へ下降する乾燥した空気が地中海西部に暑く乾燥した気候をもたらす一方、冬には、この高圧帯が膨張して偏西風を送り、内陸に雨をもたらす。
アゾレス高気圧の拡大は1850年以降に現れた
米ウッズホール海洋研究所らの研究チームは、西暦850年以降約1200年にわたる気候モデルシミュレーションにより、アゾレス高気圧がどのように変化してきたのかを調べた。その研究成果は2022年7月4日、学術雑誌「ネイチャージオサイエンス」で掲載されている。
これによると、1850年以降、アゾレス高気圧が非常に大きくなる冬が顕著に増え、イベリア半島を含む地中海西部に異常な乾燥状態をもたらしている。このようなアゾレス高気圧の拡大は過去1000年で前例がなく、ポルトガルの石筍に残された降水量の痕跡とも整合した。
アゾレス高気圧の拡大は1850年以降に現れ、20世紀に入ってさらに強まっている。このタイミングは人為的に引き起こされた地球温暖化と一致する。
21世紀末までに降水量がさらに10~20%低下する
研究チームは「温室効果ガスの濃度の上昇により、アゾレス高気圧は21世紀の間も拡大し続けるだろう」と予測。21世紀末までに降水量のレベルがさらに10~20%低下すると予測され、イベリア半島での干ばつリスクの高まりが懸念されている。
ブドウやオリーブの栽培が盛んなこの地域では冬の雨が不可欠だが、20世紀後半以降、降雨量は減少している。これまでに「イベリア半島でのブドウ栽培の好適地が2050年までに25%以下まで縮小する」との予測が示されているほか、スペイン・コルトバ大学らの研究チームが2020年3月に発表した研究論文では「冬の干ばつと温暖化によりスペイン南部でオリーブ栽培の好適地が制限され、オリーブの生産量が21世紀末までに30%減少する」と予測されている。