最新記事

熱中症

子供の体温は大人の3〜5倍の速さで上昇する──気温38度、車内に放置され5歳児死亡

2022年6月24日(金)17時30分
佐藤太郎

YouTube/NBC News

<その日ヒューストンは最高気温38.8度と今期一番の暑さ。テキサス州保健局は、子供の体温は大人の3〜5倍の速さで上昇するため、大人よりも熱射病で死亡するリスクが高いと注意喚起する>

アメリカ、テキサス州で6月20日、車内に置き去りにざれた5歳の男の子が、熱中症のため死亡した。地元の保安官によると、この日は気温が38度にまで達していた。

People誌によると、母親は8歳の姉の誕生日パーティーの準備に追われる中、きょうだいを連れ車で出かけた。帰宅して各々が車から降りるとき、後部座席のチャイルドシートに乗っていた男の子はベルトを外すことができず、取り残されたとみられる。

その日ヒューストンは、最高気温38.8度と今期一番の暑さに見舞われていた。

母親は上の子が車を降りる姿を見て、下の子も自分で降りたと思い込んでいたそうだ。2〜3時間後に下の子がいないことに気づき、車内でチャイルドシートに縛り付けられたままぐったりしている息子を発見。すぐに救急車を呼んだが、男の子はその場で死亡が確認された。

警察は、この件についてさらに捜査を進める計画だ。

運悪く代車だった

母親の話によると、亡くなった男の子はいつも自分でチャイルドシートのベルトを外して車のドアを開けることができていたという。ただ、運悪くこの日母親は代車を使っていた。いつもの方法でロックが外れず焦りながら、暑さに体力を奪われていった男の子を思うと、2度とこんなことが起きないことを願わずにいられない。

少年の死の翌日、ハリス郡保安官事務所は、子どもたちに車の安全を教えるためのヒントをツイッターに投稿した。チャイルドシートの外し方、クラクションの鳴らし方、ハザードランプの付け方、ドアの開け方などを教えるなど、子どもたちに車の安全を教えるためのヒントが載っている。



猛暑の6月に注意

当局の投稿には、今月の猛暑についての注意書きが添えられている。テキサス州は今年「記録的に暑い6月になりそうだ」

1998年から熱中症による死者を追跡調査している気象学者のジャン・ヌル氏によれば、今年全米で、車内に放置された子供が熱中症によって死亡したケースはこれで5例目になる。

この一週間では2件目である。先週の6月16日には、ペンシルベニア州で生後3ヶ月の赤ちゃんが暑い車内に数時間放置され、死亡している。

テキサス州保健局は、子供の体温は大人の3〜5倍の速さで上昇するため、子供は大人よりも熱射病で死亡するリスクが高いと指摘する。車内の温度が40度に達すると熱射病の症状が出始める恐れがあるという。部門は41.7度を「致命的な温度」としている。

米高速道路交通安全局によると、外気温がわずか21度でも車内の温度は46度以上に達することがあるという。1998年以降、全米で、蒸し熱い車内で熱中症のため死亡した子供は912人にのぼる。ほとんどが親や一緒にいた大人に忘れられていたことが原因で命を落としている。

<合わせて読みたい>
北朝鮮の中高生「恐怖の夏休み」──熱中症で大量死も
学校外のプールで行う水泳の授業はいいことだらけ
「犬は6分で死ぬ」 猛暑の車内への置き去りはほんの数分も絶対ダメ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中