最新記事

日本政治

日本に避難した20代ウクライナ女性が「新戦力」に 都内のロシアンパブ大盛況が突きつける課題

2022年6月22日(水)11時29分
元木昌彦(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

日本は、世界から「難民鎖国」と非難されるほど、難民に厳しすぎるとして有名な国である。だが今回のように、ロシアに理不尽に侵略され、雄々しく戦っているウクライナからの避難民たちを受け入れなければ、世論の反発にあうのは間違いない。

難民として受け入れれば、他の国から逃げてきた難民やその支持者たちから、差別ではないかと批判が起きることも考えられる。

そこで、知恵者がひねり出したのが避難民という呼称だったのであろう。

1日2400円で暮らしていかなければならない

4月にポーランドを訪問していた林芳正外相が、ウクライナからの避難民をわずか20人だけ乗せて帰国したことが話題になったが、5月24日の時点で避難民は1040人になっているとNHK(5月24日18時01分)が報じている。

この人たちはあくまでも特例措置としての一時的な受け入れであり、難民条約や入管法に基づく「正規の難民」ではない。

東京都は、ウクライナから避難してきた人々に都営住宅を最大700戸用意するとしている。すでに20組以上が入居しているという。主な家具、家電は都が設置するが、住むとなると水道代や電気代は自腹だそうだ。

近くにウクライナ語やロシア語を話せる人間はいない。スーパーで買い物をするにも一苦労だ。日本語を勉強して仕事に就こうと努力する人もいるが、難しい日本語をマスターして仕事を見つけるのは簡単ではないはずだ。

日本政府は、「一時滞在先を出たあとは、一日当たり12歳以上は2400円で、2人目以降は1600円、11歳までは1200円を支給するとしています」(NHK、4月11日17時16分)

私は1日2400円では暮らせない。このほか、医療費をどうするのか、その際、医療通訳も必要になるが、その確保はできているのかなど、多くの課題があることは素人目にも分かる。

世間が忘れた頃に特例をなくそうとするのではないか

日本政府は、いたずらに戦争を引き延ばすウクライナへの援助は即刻止めて、いま日本で困窮している避難民たちの支援に、そのカネを使うべきである。

しかし、戦争が早期に終結したとしても、すぐに帰国するのは難しいだろう。万が一、この戦争が長期化したら、日本政府は彼女、彼らをどう遇するつもりなのだろうか。

日本人は忘れやすい民族である。長期化すれば毎朝「遠い国の戦争」を報じていたワイドショーもやらなくなり、多くの日本人がウクライナ戦争のことを忘却していく。

そうなれば、世論に敏感な日本政府は、「避難民」という特例をなくそうとするのではないか。

生活の最低保障もなくなり、難民認定を受けられなければ"地獄"を見ることになるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア黒海主要港、石油積み込み再開 ウクライナの攻

ビジネス

メルク、インフルエンザ薬開発のシダラを92億ドルで

ワールド

S&P、南ア格付けを約20年ぶり引き上げ 見通し改

ワールド

米国境警備隊、シャーロットの移民摘発 初日に81人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中