最新記事

環境

温暖化で野草の40%が減少、朝食に大打撃が

Vanishing Flowers

2022年5月20日(金)17時30分
スプーシー・ラマン

論文によると、暖かくて湿った区画に育った植物は14年は25種類だったが、15年は19種類に減った。そこにやって来た昆虫も、14年は80種類だったが、15年は69種類に減った。

一方、気温と湿度が上昇しても、通常の区画と比べて植物の構成にはほとんど変化がなく、アラゲシュンギクやヤグルマソウ、オオイヌノフグリ、ナズナ、コハコベなどが最も多かった。

ただし、気温が上昇すると全体的な野草の量は40%減った。花が枯れた後にできる種子の数も減り、種子の重さも通常の区画より大幅に軽くなった。唯一の例外はオオイヌノフグリで、その種子は重くなった。ただ、花の蜜が65%減ったため、集まってくる昆虫は減った。

「この研究の重要な発見は、全ての野草が温暖化に同じ反応を示すわけではないらしいことだ。このため気候変動が植物群落や昆虫との関係に与える影響を予想するのは難しい」と、スタウトは語る。

それでも野草の全体量と種子の数が減少したことは懸念すべきだと、スタウトは言う。「なぜなら野花の減少は、既に花粉媒介昆虫が減る大きな原因になっているからだ」

暖かい環境では、花粉媒介昆虫の採食行動に大きな変化が生じることも分かった。最も数が多いハナアブとミツバチとマルハナバチは、必要な蜜と花粉を集めるために、より多くの花に飛来し、同じ花に飛来する頻度も増した。

「花の数が減って蜜が減ると、花粉媒介昆虫にとっての食料が減る」と、モスは指摘する。それは虫の間で競争を引き起こし、最適ではない花を選ぶことを強いられる虫も出てくるかもしれない。「そうなれば虫たちの適性と生き残りにも影響を及ぼす恐れがある」

現代の世界では、農業と住宅開発のために、野草を含む植物の40%が絶滅する恐れがある。米カリフォルニア州は、気候変動により冬の気温が上昇して降雨量が減った結果、過去15年間で野草の種類が15%減ったとされる。

イギリスでは、人間の活動により、1930年代にあった野原の約97%が失われ、野イチゴやイトシャジンなど、かつてはありふれていた野草の存続が脅かされている。

野花の喪失は、数千種の昆虫にも影響を与える。これにはハチのような花粉媒介昆虫だけでなく、アブラムシやバッタや毛虫などの草食類も含まれる。クモやテントウムシやクサカゲロウなど、害虫を駆除する役割を果たしてくれる虫にもダメージを与える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中