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「現場に行くのがエリートの証」の時代へ──リモートワーク考

2022年5月13日(金)07時05分
山本昭宏(神戸市外国語大学総合文化コース准教授)

「もう行かなくていい」「もう来なくていい」

「リモート」は、確かに便利だが、そこからいかなる価値が生み出されるのか。

コロナ禍が始まったとき、「エッセンシャルワーカー(essential worker)」という言葉が話題となった。医療、流通、運輸など、現場にいなくてはならない「必要不可欠」な職業に就く人々のことを指すことは周知のとおりだ。翻って、自分の仕事は「必要不可欠」なのかと考えさせられる。

今後、「誰でもできる仕事」はリモートワーカー(あるいはAI)に任せてしまって、価値創出を担うエリートは対面で働く......という労働環境が成立してしまうかもしれない。

「現場に行くのがエリートの証」という状況は、先のグーグルなどの例からも今後の見通しとしてありうるだろう。トップとボトムの差が、働く場所に表れるという時代が来ているのかもしれない。

かつて俳人の長谷川櫂は「間の文化」という言い方で日本文化を捉えた。「間」と書いて「ま」と読ませる。日本人は「間」を使いこなして生きているという議論で、「間」を大切にする態度は「間に合う」「間違い」「間延び」などの言葉に端的に表れているという。(『和の思想』中央公論新社、2009年) 

「間(あいだ)」は、へだたりであると同時に、関係が生まれるために必要な余白だ。異質なものをつなぎ、そこから価値を生み出す可能性の源泉が、「間」にはある。

こうした「間」を、いかに見出し、再評価するのか。どうやって「間」を創り、自分のものにするのか。「間」は、これからの社会を生きるうえで重要なポイントになるはずだ。


[注]
(※1)https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/20j034.pdf
(※2)https://edition.cnn.com/2020/03/10/tech/google-work-from-home-coronavirus/index.html


[筆者]
山本昭宏
神戸市外国語大学総合文化コース准教授。1984年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門はメディア文化史・歴史社会学。著書に『核エネルギー言説の戦後史1945~1960──「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院)、『教養としての戦後〈平和論〉』(イースト・プレス)、『原子力の精神史──〈核〉と日本の現在地』(集英社新書)、『戦後民主主義──現代日本を創った思想と文化』(中公新書)などがある。

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